01・うちの前にいたイケメンくん

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「実は先ほどの奥村さんねえ、高校の先生なのさ」 「……は?」 「あれまその反応。やっぱマスミン知らなかったのかあ。いや奥村さんのことマスミンが知ってなくって、ワタシ意外。やー、ね? 契約書類とか見てたらね? 職業欄んとこに書いてあったのさ。教員って。しかも勤務先、道立江星(こうせい)高等学校って」  道立江星高等学校。  って、それ。あたしが通ってる学校だ。 「―――はああっ?」  驚きのあまり叫んでしまったら、母が「しっ!」と人差し指を口の前にあてていく。  いちだんと声をひそめ、仰せつけてきた。 「声でかいっ。ヒカルが知るとなんか、きゃーきゃー騒ぎ立てそうでめんどいから、黙っときっ」  騒ぎ立てそうでめんどい。と言われてしまった当の姉・ヒカルは、ちらりとこちらを見たものの、気にすることもなくまたケータイとにらめっこ。ダウンジャケットを着こんだまま、こたつぶとんに入ったまま、ぽちぽちとボタンを打っている。 「や、でも、じゃあ何であたしにはいま知らせるわけ?」 「や、だってえ。マスミンは奥村先生の学校に通ってんだしい。どうせ、そのうち知るだろうしい。と、思ってえ」  そこで若作りオバさんがしなをつくってくる。  きもいぞ、母ちゃん。 「っていうかマスミン、おつかい頼まれてくれなーい?」 「……はあっ?」 「あのねえ。明日学校行ったらねえ。奥村先生に渡してほしいものがあるのようー」  くつくつくつ。と、甘じょっばく味づけしたタレがフライパンの中で煮え続けていた。  鶏もも肉と玉ねぎを、醤油色に染めあげて。
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