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あたし。姉。坂本さん。
五人から三人になってしまった第二手術室前。その自動ドアのうえには「手術中」と記された室内標示灯がくっついていた。
でもまだ明るく点ってはいない。
奥村先生は中へ入っていったばかり。
これまでほとんど発言しないでいた姉が、ぽそっと切り出してきた。
「三澤先生だっけ? あのひと。真澄の担任の先生。きれいなひとだよねえ」と。
――そんでスタイルいいわ品もいいわで、ありゃ人気あるだろなあ。真澄のガッコの子たちに。
つぶやかれた台詞にあたしは苦笑いを隠せなかった。
三澤先生はきれい。スタイルがいい。品がいい。
はた目からはそうなるのだろう。
けど中身がちょっとアレだということを、姉は知らないのだ。
「そんでもってあの三澤先生、絶対奥村先生のこと好きだよね。見ればわかるわあ。ずーっとラブな視線送ってたもんね。ま、地元いっしょで同僚って立場だからって、わざわざ休みの土曜に病院まで会いに来ちゃう時点でもうね、そうだよね、ってなっちゃうよね」
でも残念ながら一方通行だよね。
「だって奥村先生ってばさ、わざわざ来てくれたってのにあのひとには目もくれてないし。意外だよね。あんなきれいなひとがスルーされちゃうとか。あんなきれいなひとでもレンアイとなるとうまくいかないもんなんだね」
それでもってフビンなのは、あのかわいい男子くんのほうだよ。
「あの子のほうはあの子のほうで、クールにふるまっときながら三澤先生のこと大好きだよね。もう、ずーっと保護者かよ! ってなくらいにあの先生のことばっか気にしてて。なんかあの子って健気だよね。自分のおかれたカンキョウも複雑だろうにさ」
間違いないでしょ。
当然のこと言ってるでしょ。
そんな顔をしながらつらつらと語りあげる姉の横顔を、ヒィ。とおののきながら眺めていた。
舌をまく。三澤先生とも佐野とも初対面。さっき会ったばかり。それでいて短時間であのふたりのだいたいの気持ちを探り当ててしまった姉の鋭さに。
そうか。わかるのか。見るひとが見たら。
ちょっと一緒にいただけで、誰が誰を想ってるのとか、そういうことが。
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