01・うちの前にいたイケメンくん

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   学校から帰ったら、うちの玄関前に人がいた。  男だった。  けっこう若い。  背も高くて足ながい。  呼び鈴はとっくに鳴らしてあるらしい。  でも反応がないから困っているといったふう。腕組みをしてうちのボロい玄関ドアとにらめっこ。  のあと、おっきな溜息といっしょにうつむいていた。さらさらな髪の毛が、そのひとの動きにあわせて垂れていく。  たぶん、学生だと思う。  近くにある大学の。  マイ母ちゃんが貸し出してるアパートに住んでる人なんだと思う。  現に、うちのとなりに構えてあるアパートに住んでいるのは全員、大学生だったはず。  それに服装もそれっぽい。黒のショートブルゾンにブルーデニム、アディダスっぽいスニーカー。っていう、そこらの大学生がよくしてそうなカッコウだ。 「あのう」  声をかけるとそのひとは、ふいっと顔を向けてきた。腕組みをほどきながら。  あれ、意外と爽やかくんだった。  けっこうイケメン。  いやいや一般的観点からして間違いなくイケメン。  特に目がいい。フォルムがなんかいい。すうっと切れ長でありながらも大きくて。  でも奥に、何か真冬のように冷たいものを抱えこんでそうだけど。  ――なんて思ってしまったことは表に出さずに聞いていく。 「うちのアパートに住んでる人、ですかね? もしかして鍵でもなくしちゃいましたか?」 「――はっ?」  と、イケメンくん。口をひらくなり白い息。  寒そうだ。鼻の先がなんだか赤い。薄暗くてもわかるくらいに。  いつからここにいたのだろう。  でもこのイケメンくん、高校の制服にマフラーぐるぐる巻きのあたしへ一瞥をくれたあと、なぜだか眉をひそめだす。  なんでだろ。見てるだけで寒そうなのかなコート着てないと。タイツもはかずに素足だし。 「あのう?」 「……あ、や、鍵をなくしたとかじゃなく。俺、来月から入居する予定の者なんですけど。あのそちら、大家さん。の、娘さん? なんでしょうか?」  おっとイケメンくん。クリアで張りのある声ではないですか。もう少しくぐもった、低い声の持ち主かと思いきや。 「あっ、はい。そのとおりでごじゃい。わたくしゃ、大家の娘なんでごす」
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