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じゃ。
頭をさげて、イケメンくんがこちらへ近づいてくる。じゃなくてあたしら姉妹の横をすたすたと抜けていく。
足ながいから歩幅でかい。
「あっ、ちょっ。待って下さい!」
呼び止めたのは姉だった。
声を受けて、イケメンくんは足を止める。振り返ってくる。
でも姉じゃない。
イケメンくんは、あたしだけに目を合わせてきたのでドキリとする。
だって、どうも惹かれる目なんだもん。やさしそうなのと冷たさそうなのが混ざり合った、絶対にひと筋縄ではいかなそうなひとだってわかる、目。
何も喋れず黙りこんだところで、姉が横で尋ねていた。
「……いらしたこと、うちの母にしっかり伝えておきます。なのでお名前、教えてもらえませんか?」
「え? 名前?」
一瞬、いぶかしそうにしながらも。
イケメンくんは口をひらいた。
「奥村です」
「……オクムラさん。あのー、下のほうのお名前は?」
ついでの姉の問いかけに、イケメンくん――もとい、オクムラさんは、またいぶかしげ。
それでも仕方ないなというように告げてきた。
「広志です」
ヒロシ。
オクムラヒロシ。
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