01・うちの前にいたイケメンくん

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 じゃ。  頭をさげて、イケメンくんがこちらへ近づいてくる。じゃなくてあたしら姉妹の横をすたすたと抜けていく。  足ながいから歩幅でかい。 「あっ、ちょっ。待って下さい!」  呼び止めたのは姉だった。  声を受けて、イケメンくんは足を止める。振り返ってくる。  でも姉じゃない。  イケメンくんは、あたしだけに目を合わせてきたのでドキリとする。  だって、どうも惹かれる目なんだもん。やさしそうなのと冷たさそうなのが混ざり合った、絶対にひと筋縄ではいかなそうなひとだってわかる、目。    何も喋れず黙りこんだところで、姉が横で尋ねていた。 「……いらしたこと、うちの母にしっかり伝えておきます。なのでお名前、教えてもらえませんか?」 「え? 名前?」  一瞬、いぶかしそうにしながらも。  イケメンくんは口をひらいた。 「奥村です」 「……オクムラさん。あのー、下のほうのお名前は?」  ついでの姉の問いかけに、イケメンくん――もとい、オクムラさんは、またいぶかしげ。  それでも仕方ないなというように告げてきた。 「広志です」  ヒロシ。  オクムラヒロシ。
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