01・うちの前にいたイケメンくん

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 なんか、フツーな名前だな。  もう少しいまっぽい名前のひとかと思ってた。ヒロトとかアツトとかなんか、そんな感じの。    ――なんて考えちゃってもお口はチャック。 「じゃあ、すみません。俺来たこと、大家さんに伝えておいていただけますか?」 「はい、それはもう!」  勢いよくうなずいたのは姉だ。 「……お願いします」  ふたたびお辞儀してきたオクムラさんは、さくっと背中を見せつけてくる。  いち早くここから去ってしまいたい。そんな雰囲気をうしろ姿から漂わせて。  急ぎ足でオクムラさんが向かった先は、うちのとなりに構えているアパートだった。母が貸し出してる二階建てアパート。そこの、車八台分停めておけるのに空いている駐車場。  無造作に停めてあった黒っぽい車(くわしくないから車種とか知らん)の鍵をあけ、オクムラさんはさっさと乗りこんでしまった。    すぐに轟いたエンジン音。薄暗い駐車場にぱあっと点るヘッドライト。  雪がとうに消えて乾ききったアスファルトを、タイヤ四輪がゆっくりと這っていく。  オクムラさんが運転する車は歩道をまたぎ、大通りの方角へ左折して行ってしまった。
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