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「何考えてるんですか?」
大雅が心配そうに瑞貴を見つめる。
「んー、部活のことかな」
簡単に嘘をつく。まだ自分の本当の気持ちを大雅に言おうとは思えなかった。言いたくないのではなく、大雅がもう少し素直になってからでも遅くない気がしたからだ。
「予選突破したんですよね」
「うん。次は県大だよ。見に来る?」
「関係ない人が見に行っていいんですか?」
「全然いいよ。普通に一般客への当日券いっぱい売られてるし、高校演劇が満席になることもないから、終わる時間ギリギリまで販売されてると思う」
「へぇー、見に行こうかな」
そこで瑞貴はまたわざと意地悪を言った。わかっていてもからかいたくなる。
「ゲイの話だよ」
「……何がです?」
「演劇の台本。ゲイの主人公が悩んでる話」
「瑞貴さんが選んだんですか?」
「まさか、生徒が書いたんだよ、腐女子の」
「腐女子って……」
「何?」
「何か気持ち悪いですね」
急に自分の生徒を侮辱され、瑞貴にしては珍しく苛立ちを覚えた。
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