七、

4/5
前へ
/44ページ
次へ
「何考えてるんですか?」  大雅が心配そうに瑞貴を見つめる。 「んー、部活のことかな」  簡単に嘘をつく。まだ自分の本当の気持ちを大雅に言おうとは思えなかった。言いたくないのではなく、大雅がもう少し素直になってからでも遅くない気がしたからだ。 「予選突破したんですよね」 「うん。次は県大だよ。見に来る?」 「関係ない人が見に行っていいんですか?」 「全然いいよ。普通に一般客への当日券いっぱい売られてるし、高校演劇が満席になることもないから、終わる時間ギリギリまで販売されてると思う」 「へぇー、見に行こうかな」  そこで瑞貴はまたわざと意地悪を言った。わかっていてもからかいたくなる。 「ゲイの話だよ」 「……何がです?」 「演劇の台本。ゲイの主人公が悩んでる話」 「瑞貴さんが選んだんですか?」 「まさか、生徒が書いたんだよ、腐女子の」 「腐女子って……」 「何?」 「何か気持ち悪いですね」  急に自分の生徒を侮辱され、瑞貴にしては珍しく苛立ちを覚えた。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加