七、

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「何が気持ち悪いの?」 「だって男同士の色々が好きだってことですよ」 「まあ、平たく言えば」 「気持ち悪いですよ。実際のゲイを知らない人でしょう?妄想で勝手に盛り上がってるんですよね」 「確かにそうだろうけど、それは何にでもいえることだろ。歴史マンガや歴史小説が好きな人たちがいるとする。例えば、実際の歴史に忠実に描かれた作品だとしても、その時代を生きた人が書いているわけではない。つまり人の勝手な妄想だ。他人の勝手な妄想で、勝手に盛り上がっているわけだ」  大雅は何も言い返せなくなる。 「……瑞貴さん、何か怒ってます?」 「そりゃ生徒を侮辱されれば怒るよ」  大雅はしばらく瑞貴を見つめた後で、どうにも堪えられなくなり俯いた。 「……もしオレが誰かに侮辱されるようなことがあっても、瑞貴さんは庇ってくれますか?」 「庇ってもらいたいの」 「……瑞貴さんの生徒になれば庇ってもらえるんですかね」 「それはまた俺の生徒になりたいってこと?」 「……そんな意味じゃないです」  瑞貴はわかっていてわざと大雅を傷つけるようなことを言った。もっと大雅の心を傷つけて揉みくちゃにして、泥団子のようにすれば、そうすれば今よりもっと素直になるような気がした。 「また生徒になりたいとかそういうんじゃないですけど……」 「教師は生徒を守らなければいけない立場だから守るんだ。それ以上でもそれ以下でもない」  大雅はおずおずと上目使いで、眉のつり上がった瑞貴の顔面を見つめる。生徒のためにこんなに怒れる先生、守ってもらえる生徒…… 「守ってもらえるだけでも羨ましいな……」  大雅が最後にぼそっと呟いた言葉が耳に届くが、あえて瑞貴は返事をしなかった。
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