八、

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八、

 あの日気まずくなったまま、大雅とは一ヶ月会っていない。連絡はときどき来るが、以前ほど多くはなく威勢もない。最後に会った日のことを気にしているようだった。 (テスト作りましたか?) (だいたいね。何、テスト受けたい?) (大学のレポートと試験だけでもううんざりです) (そういえば、何学部だっけ)  聞いておいて思い出したが、すでに送信した後だったので訂正はしない。 (前に言ったと思うんですけど)  不満そうなのが文面だけで伝わってきてかわいいが、そういうことを一切本人に伝えたことはなかった。 (そうだっけ) (経済学部の経営学科ですよ) (あー、聞いたような気がする) (何度も言ったと思うんですけどね)  明らかに機嫌が悪くなるが瑞貴は特に気にしない。何を言ってもたぶん嫌われることはない。相談を受けて以来、やたらとなつかれているのは瑞貴自身もわかっていた。
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