たまご?

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たまご?

 エリカはいつだってそうだった。 短編小説を順番通りに読まない。いつだってバラバラ。 その時の気分でどれから読もうか…それも楽しみの一つなのだと彼女は言う。 その時の気分で適当にページを開いたところから読んでみたり、 気になったタイトルから読んでみたり… 私が読みたくて手に取った本なんだからどう読もうと私の自由でしょ? 彼女の持論。 けれど、作者だってきっと短編の内容を考えて考えて構成しているに違いない。 最初に出てきた短編のその後や目線を変えたものが後半に出てくることだって珍しくはない。 なのにエリカは短編をページ通りではなく気の向いたまま読む。 理解しがたい。 けれどもっと理解しがたいのは、いや、作者への冒涜とも思えるのは推理小説を最後から読むこと。 つまり先に犯人は誰なのかを知ってから読むことだ。 「あり得ない…」 と、首を横に振る私にエリカは、 「そう?だってどうしてこの人が人殺しをしなければ行けなかったのか、を知りながら読むほうが感情移入しやすくない?」 黄金比率の整った顔であっけらかんと言う。 まるで私がおかしなことを言ってるみたいに。 そして、その度に私は自分がとてもつまらない人間のように思えてしまう。
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