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始まりの風
◇◇◇
「シンデレラ、これ下げておいて」
ぐちゃ、っと食器類で散らかった机の上を見て、思わずため息をつきそうになる。
なんで私が、そう言いたくなるのを堪えて、私は笑顔で頷く。
「はい、姉様」
「シンデレラ、あんたのご飯はないわよ。食べたきゃ私たちの残飯でも食べることね」
ギャハハハ。下卑た笑い声をあげて、姉様と母が去っていく。
広い食堂に一人取り残された私は、姉の言いつけ通りに食器を片付け始める。
こうしないと、私は住む家も着るものも全てなくなってしまうから。これが、私の仕事なの。
そう言い聞かせて、黙々と手を動かす。
母が亡くなったのは、三年前。父は一人娘の私を大層可愛がってくれていたので、一日中泣きくれる私を心配して、すぐに新しい女性と結婚した。
そうしてやってきたのが、あの意地悪な継母と二人の娘達である。
私は使っていた部屋を奪われ、小さな屋根裏部屋に追いやられた。元々身につけていた煌びやかなドレスは姉達に盗られ、いつの間にか私はボロボロの木綿のワンピースが主になった。
姉達と継母は、父の見えない所で私に陰湿な嫌がらせを繰り返した。それでも、父がいる間は我慢出来た。
しかし一年前に父が病気で亡くなると、その嫌がらせはエスカレートしていった。
ご飯は姉たちの残り物。朝から晩まで、彼女らの身支度、身の世話。
日々の家事でボロボロにすり減り、埃まみれになった私についたあだ名は、シンデレラ。
私は姉達から、シンデレラと呼ばれるようになった。
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