肉!

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肉!

「焼き肉ってめちゃめちゃエロくない?」  もうもうと上がる煙と、それを吸い込む大きな換気扇。網を挟んで向き合う彼らの間にそれがあった。 「いきなり何言ってんスか」  トングで肉の様子を見ていた太一は、圭の発言を呆れた顔で見た。 「生肉ってエロいじゃん。ほら、焼いたら脂がぽたぽた落ちていくのとか」 「はあー……」  特に興味ないといった様子で太一は首をひねる。 「人と焼き肉食うのって、ちょっと勇気いるよね」 「そうスか? 別に」 「ノリ悪いなあ!」  テンションの低い太一を気にする様子もなく、圭はごきげんにビールを傾けた。  今の圭は少しだけ、髪が長めだ。長いといっても少し耳にかかるくらいで、ゆるいパーマがかかった黒髪。去年の秋に会ったときはかなり短髪だった。その前は、変な真ん中分け。会うたびに髪型が違うのは、本人の好みか、それとも。  大体、くっきりついた指輪の跡がもう、いかにも癇に障る。直前に外したことがまるわかりだ。  そういうことを考えてこちらがもやもやしているというのに、圭はどこか無神経で、いつもあっけらかんとしている。 「お肉追加します?」  空になった皿をテーブルの隅に寄せながら、太一が尋ねる。すると今まで歯を見せてにこにこしていた圭が、ふと真顔になった。 「いや、やめとこ。あんま腹一杯になったら眠くなりそう」 「……はあ」  そういうところ!  太一は腹立たしく思いながらも、胸が高鳴るのを抑えきれなかった。
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