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 圭から数字だけの連絡を受けた日、太一はいつものようにホテルの部屋を予約した。出張で都内に来るときの、圭の定宿。会うときは太一も同じホテルに泊まり、圭の部屋を訪ねる。 「じゃあ、後で」 「うん」  太一は一旦自分の部屋に入り、シャワーを浴びる。いつもより念入りに身体を洗いながら、気分を高めていく。  圭と最初に会ったのは何年前だろう。自分は舞台の稽古中で、見学に来ていた圭を遠目に見た。彼はスーツ姿で、スタッフに熱心に質問していた。そのときは直接話すことはなかったが、Webのプランナーをやっている人だと後から聞いた。  自分より少し背が高くて、スタイルがよくて、『大人の男』という印象だ。自分がそのときやっと二十歳になったくらいだったから、実際、6つ年上の圭は、太一にとって紛れもなく大人だった。  もしかして、あれから10年くらい経つ?  そう思うとゾッとした。いま自分が20代最後の年齢なのだから、そういうことだろう。二人で会うようになってからだって、もう4、5年だ。 「こっわ」  ぷるぷると首を振る。せっかく久しぶりに会ったのに、余計なことは考えまい。 「おっじゃましまーす」 「はい、いらっしゃい」  圭もシャワーを浴びた後のようで、Tシャツにハーフパンツというゆるい格好だった。 部屋の小さな丸テーブルに、下のコンビニで買ってきた飲み物とスナック菓子が置いてあって、太一も、自分が持ってきたペットボトルをそこに置いた。 「またそれ買ってる」 「そう。定期的にブームが来るんです」  ふふ、と笑いながら、小さな椅子の上に膝を抱えて座り、お気に入りの乳酸菌飲料のペットボトルを開ける。圭もその向かいに足を組んで座ると、部屋で入れたコーヒーを飲み始めた。  焼肉屋で彼はビールを飲んでいたが、いつも部屋に入ってからはアルコールを飲まない。太一も飲めないクチじゃないのだが、彼と会うときはいつもソフトドリンクだけにしている。  なぜって、酔っ払った、ふわふわした状態を見られたくないから。
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