神になった博士

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 それはテレポートマシンを博士が操縦することによって証明された。と言うのも或る時は山で遭難した人を、また或る時は雪山で遭難した人を、また或る時は海で遭難した人を、また或る時は湖で遭難した人を、また或る時は川で遭難した人を、また或る時は砂漠で遭難した人を、また或る時は北極で遭難した人を、また或る時は南極で遭難した人を、また或る時は無人島で遭難した人を発見しては救助したのである。博士は俗人が嫌いと言ってもいざという時は愛の力を遺憾なく発揮するのだ。そのお陰で救助された人たちはSNSで博士の偉業を伝えたので博士が優しい事実は世界中に流布し、人口に膾炙したのである。  そしてまた或る時、博士は地中海をテレポートマシンで彷徨っていると、なんと体から切り離された男性器が漂流しているのを発見した。実にシュールなアンビリーバブルなワンダフルな光景で、それには泡が纏わりついている。だから、これはひょっとしてウラノスのと博士はピンとくると、案の定と言うべきか、信じられないことに泡から全裸の美女が生まれて来た。それは紛れもなくアフロディーテであった。ということは何かの拍子に時空を遡ってパラレルワールドに移動したということか?しかしギリシャ神話はフィクションではないのか?ま、そんなことはどうでもよくなった博士は、尋常でなく興奮して色めき立って風の神アネモイに代わってキプロス島に運ぶべく彼女をテレポートマシンの中へ引き入れた。その際、博士は彼女の手首を握って何とも言えぬ感触を持つ柔肌だと感じ入った。それは一点の曇りもない透き通るような白い肌で如何にも弾力が有りそうな柔らかい肉を包み、メリハリの利いた豊満な肉体美を表している。そしてコバルトブルーのエーゲ海のような深みのある青い目を持ち、体に巻き付くような艶やかなブロンドのロングヘアで彩られた、この上なく美しい面貌。正に名画「ヴィーナスの誕生」から抜け出たよう。 「あなたは誰?」  夢の中のささめきかと思われた。麗しいソプラノ調の響きを伴ったラテン語だった。  美女には目がなく語学堪能な博士は、でれっとした顔を敢えて引き締めると、目端を利かせてラテン語で答えた。 「私はあなたと共にオリンポスの神々に伍する男です」  それから博士はやる為ではなくエッケホモとばかりに服を脱いで自分もすっぽんぽんになった。古代ギリシャ彫刻のように筋骨隆々とした筋肉美を誇る博士は、自信満々で言った。 「あなたと共にキプロス島に行ったなら季節の女神ホーラたちが服や飾り物を持って私たちを迎えにやって来ることでしょう」  実際にキプロス島の岸辺に降り立つと、果たしてホーラたちはやって来て一人が言った。 「まあ、あなた方はなんてお美しいんでしょう!遠目に見ましてもお美しいのが分かりましたから神に相応しいと存じまして服と飾り物を御用意して参りました。さあ、どうぞお召しになってください」  そんな訳でアフロディーテと博士は服と飾り物を身に付けると、ホーラたちに連れられてオリンポス山に行き、アフロディーテは愛と美の女神となり、博士は自然学の神となり、これより二人のロマンスは太陽のように輝かしく神々しく始まったのであった。功徳の表れであろう、博士は報われたのだ。  
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