神になった博士

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 博士はミザントロープである。何が嫌いって自然破壊していながら自分たちは皆さんの為に役立つ事業をしているなぞと綺麗事ばかり言って自分たちが齎す弊害を棚に上げ自分たちの営みを美化するところだ。それに引き替え、他の生物は地球に優しいが、人間は地球に優しくないばかりか万物の霊長だと威張っている。斯様に人間は図々しく嘘ばかりついている!付け上がっている!逆上せ上がっている!驕り高ぶっている!と憤る博士は、縁なき衆生は度しがたしと諦観しているし、中途半端なことが嫌いだし、狷介不羈の魂を持っているし、高踏的だし、志操堅固だから秋霜烈日な意志で以て七里結界を実践して町中の屋敷に住んでいた。  但し博士は美女は好きだから美女と遊べそうな花街色街には出かけるが、一般の町の風景も嫌いだから籠もりがちだ。何しろ低俗な物が嫌いなのだ。しかし、自然は好きだから自分と自然界を直結するべくテレポートマシンの開発に乗り出した。水陸両用だから陸上だけでなく海中の自然だって楽しめる極めて尤物を製造しようというのだ。  それが孜孜として取り組んだ結果、三星霜を閲して完成すると、嫌気が差す俗人と会うことなく自然と思う存分、触れ合えるようになったので博士はストレスを残らず発散出来、心身共にリフレッシュ出来て完全な健康体になった。  自然を堪能している時の博士は光風霽月として明鏡止水として安心立命としているから凡人の間で人望があると言われている人と比較すると、崇高さに於いて同日の論ではないのである。それは見た目に於いてもそうで頗る人相が優美になるのだが、人々は博士が自分たちと会おうとしないし、偶に会っても仏頂面をしているから、あの人は変人だの冷たい人だの高慢だのと噂するのだ。実は自然を誰よりも愛する温かい豊かな心を持った優しい人なのにだ。
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