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「亜咲? 朝よ。早くご飯食べなさい」
朝、母親に起こされると、亜咲は眠たい目を擦りながらリビングに向かう。
ささっと朝飯を食べるように言われた亜咲はしぶしぶご飯を食べると亜咲は姉がいつも座っていた椅子に目を向けるのであった。
(亜咲。早く食べないと遅刻するよ)
亜咲は行方不明になった姉のことを毎朝、無意識に偲ぶ。
いつも、甲斐甲斐しく世話をしてくれた姉を。
「はあ…」と深いため息を吐くと、早々とご飯を食べ終え、姉の座っていた椅子に向かって「行ってきます」という。
これは亜咲のいつもの習慣である。
亜咲の姉がいなくなってもう三年になるのだ。
「お母さん、先に出るから鍵ちゃんと閉めといてね」
亜咲の母の向かう先はいつも決まっている。
駅前で行方不明の姉に関するビラを配っているからだ。
そう。いなくなった日から毎日である。
亜咲が毎日、ため息を吐く理由は自分が何もできないと確信しているからだろう。
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