1.ゲリラ豪雨のあの日

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―――――――――――― 今年は天候が不安定だ。 ついこの前は雨ばかり降っていたのに、今週はずっと太陽が照りだしている。 そして来週からはまた雨が続くらしい。 雨の日は客足が少なくなるから、出来れば晴れが続いてほしいのだが……。 ―ー16時00分。 いつもよりランチタイムが混んでディナーの分の材料が足りなくなり、近所のスーパーへ買い出しに行っていた。 店へ戻ってくると駐車場に1台、バイクが停まっているのが見えた。 あのバイクは見覚えがある……。 「あっ」 僕に気付き、こちらへ歩みをすすめる。 「この前の!」 「先日はお世話になりました。これお礼で……」 この前の豪雨の時に出会ったハーレーの女性が、僕に白い紙袋を渡す。 「気にしなくていいのに」 と言いつつ、彼女の厚意を踏みにじるのは嫌だからお礼の品を受け取った。 「あの、もしかしてこの時間店やってないんですか?」 ドアに書かれている営業時間を見ながら問いかけられた。 「はい。ランチは15時までで、ディナーは17時半からなんです」 そう答えると、彼女はこの前と同じように申し訳なさそうな顔をした。 「すみません。時間知らなくて、この前も今日も営業時間外に押しかけてしまって……」 僕は慌てて否定する。 「いやいや!この前は緊急事態でしたし、気にしないでください!……あ、今日も休憩していかれます?飲み物くらいは提供できますよ」 彼女とは波長が合うのか何だか落ち着く。この前は全然話が出来なかったから、いろいろ話がしてみたい……と思って誘ってみるが。彼女は首を横に振った。 「今度また、営業時間内に出直します」 そう言うと、僕に一礼してバイクのエンジンを始動した。 あの重低音が響く―ー。 僕は名残惜しくなり、ヘルメットを被ろうとする彼女の腕を掴んだ。 彼女は驚いたようで目を見開き、こっちを見る。 その綺麗な茶色い瞳を見つめながら、僕は口を開いた。 「名前を教えてくれませんか?」 その言葉に彼女はまた驚いた様子だったが、表情はすぐに微笑みに変わった。 「芹香(せりか)です」 普段のクールな表情と違った―ー愛嬌のある可愛らしい笑顔を浮かべた芹香さんを見て、僕の胸は高鳴った。 心の中がほわっと暖かく包まれる。 長い間忘れていた何かが戻ってきたような、不思議な感覚が僕の中で起き始めたのが分かった――ー―。
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