1.ゲリラ豪雨のあの日

2/6
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
―ー――ザアアアアアアッッッ!!!! 突然、もの凄い音が鳴り響いた。 ゲリラ豪雨だ。 ほんの少し前まで眩しい程に輝いていた太陽は淀んだ雲に隠され、空は日が落ちたように暗くなっていた。 結局今日も雨。天気予報は当たりだったみたいだ。 暗くなった店内に明かりを灯し、僕はまたキッチンへ立つ。 フレンチトーストを作ろうと食パンと卵、牛乳、砂糖を調理台に用意し、いざ調理開始しようと卵を手に取る。 途端、ゲリラ豪雨の音ではない、別の低い音が耳に入ってきた。 リズムの良い、胸に響く重低音。 これは恐らくバイクの音―ー…。 その重低音は、どんどん大きくなっていく。 僕はまた調理しようとしていた手を止めて、ドアの横にある窓から駐車場を覗いた。 すると、豪雨の中水しぶきをあげながらこちらへ向かってくる黒いバイクの姿が見えた。 ツーリング中に雨に打たれて咄嗟にここへ雨宿りしに来たんだろう―ーと一瞬で判断した僕は、ドアの鍵を開けて外へ出た。 バイクはドアのすぐ横に停まり、独特な重低音が治まる。 「中へどうぞ!」 バイクを降りたその人はずぶ濡れだった。僕の言葉に焦らされ、ヘルメットを被ったまま店内へ入る。 ドアを締めた後、僕はずぶ濡れのその方にテーブル席へ座るよう案内した。 「ここで待っててください。今タオル持ってきますので!」 僕は急いで2階の自宅へバスタオルを取りに戻った。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!