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その夜、中学の時の女子バスケ部のグループラインでメッセージが届いた。
〈今日の内山先生のお葬式、十和崎の戸塚龍吾くん来てたよね!? あれそうだよね!?〉
〈来てた来てた!! まさかの戸塚龍吾!! めっちゃかっこよかった!!〉
〈すごく悲しかったのに、あのかっこよさで癒された!!〉
〈イケメンすぎる。神〉
〈私も見たかった。お葬式行けばよかった〉
通知音はしばらく続いた。みんなが騒いでいるのはあのナンパ男のことらしい。そんなに有名なんだ。正直に言うと、わたしもほんの一瞬ときめいた。本当にほんの一瞬だ。ほんの少しで、ほんの一瞬。実際はチャラくて、すごく遊んでるみたいだよって教えてあげようかと思ったけれど、やめた。面倒くさいだけだ。そんなヤツのことより、わたしはなぜかあの子のことをずっと考えていた。
(ごめん待った? さ、行こう)
(人違いなんてしてないよ)
(だって俺、君のこと知らないもん)
(ごめん。怒らせるつもりじゃなかったんだ)
もしかして、あれって助けてくれたんだろうか。ナンパ男から、わたしのことを。
最初は嫌なヤツって思ったけど、意外といいヤツなのかもしれない。残された内山先生の家族のことも気にかけていたし。
あの子がどんな顔だったか、思い出してみる。
黒い短めの髪、日に焼けた肌、目は、大きくもなく小さくもなく、一重だったか、二重だったか……。
眉の印象も特にないから、きっと太くも細くもないんだろう。それとも、前髪で隠れていた?
身長はわたしよりも高かった。十センチか、十五センチか、もっとか……。
そんなに長いこと一緒にいたわけではないから、細かいところは思い出せない。でももしまた偶然会ったら、なぜか絶対にわかる自信があった。会うことなんて、ないだろうけど。
あの子に掴まれた感覚がまだ残っている気がして、わたしは自分の左腕にそっと触れた。
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