1 突然現れたサッカー男子

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 翌週の火曜日、学校の帰りに、遠回りして駅前のショッピングモールに寄った。友達がモールの中に入っている大型書店に行くと言うので付いて行ったのだ。  普段から、将来はデザイナーになりたいと言っているその友達は、ぶ厚いファッションデザイン関係の本を手に取り迷っていたが、結局値段が高いということで買わなかった。わたしもかわいい洋服は好きだけれど、作る側には興味がない。  書店を出たあとはしばらく一緒にいろんなショップを見て回ってから、友達と別れた。    ショッピングモールを東側に出て少し歩くと緑地公園がある。噴水もあって、まあまあの広さの公園だ。  家に帰るにはモールを西側に出て駅前でバスに乗る方が便利だが、今日はなんとなく、気持ちのいい場所で少しぼうっとしたい気分だった。  公園に入るとすぐ、真っピンクのボールでリフティングをしている男子高校生らしき姿が目に飛び込んできた。  瞬時にあの子のことが頭に浮かぶ。というか、実のところずっと頭から離れないでいる。  制服もこの間あの子が着ていたのに似ているけれど、紺のブレザーの制服なんて山ほどあるし、そもそも十和崎だと言っていたからここにいるわけがない。なのに、近づくにつれて胸のざわめきは増していく。  男子高校生は視線を感じたのか、つま先でリフティングを続けながらふっとこっちに顔を向けた。  やっぱりそうだ――。  彼はボールを軽くぽーんと蹴った。  わたしの前に真っピンクのおもちゃのボールが転がる。 「取ってくれる?」  わたしはボールを拾って投げ返した。 「サンキュ」  胸がトクトク言っている。 「ここで何してるの?」  思い切ってわたしは聞いた。 「見ての通り。サッカーの練習」 「そんなボールで?」 「ここにあったから。誰かの忘れ物だろうね」 「どうしてここにいるの? 十和崎でしょ?」 「俺、地元こっちだから。君どこ中? 俺は三中」 「わたしは、一中」  こんな顔だった、と思う。うん。この前も、こんな顔だった。
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