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「皆さん、本日は面接会にご参加いただきましてありがとうございます。
それでは早速ですが面接を始めさせて頂きたいと思います。
担当させていただきます,くぼです。
皆様、電波状況は問題ないでしょうか。
大丈夫だという方は手を挙げてください。」
画面に映る女性は相変わらず笑顔を張り付けていた。
久保さんに従い右手を挙げた。
画面に映し出された他の参加者も同様に手を上げる。
「ありがとうございます。
では皆様に自己紹介をしていただきたいと思います。
お名前、料理経験歴、得意料理、この面接会に参加することになった
経緯などを簡単にお話しください。
ではあおきさんからお願い致します。
指名された方以外はマイクをオフにしてください。」
何十回と繰り返してきたであろう台本通りの言葉の後に
マイクを切り替えオフにすると、
髪の長い女性がカメラに向かって話し始めた。
多分、ソファーより少し低いテーブルに
パソコンか携帯を置いているのだろう、
少しのぞき込むような体制で話している。
きっと足を組むのをやめたらもう少し話しやすくなるのにと思う。
「あおきゆうこです。
料理経験というか結婚してから家で食事を作っていた程度ですが
それでいうと20年くらいです。
得意料理は家庭料理全般で、お弁当も作ったりしていました。
参加理由は、そういう主婦経験があれば大丈夫、との事だったので
応募しました。よろしくお願いします。」
「ありがとうございます。
私たちは主婦の方の経験がとても大切だと思っていますので
問題ありません。お料理が苦手なお客様のお力になっていただければと
思います。
では次はえのさん、お願い致します。」
リモートということもあって全く緊張しなかった。
「江野洋加です。料理経験は10年ほど、
和食店や、アメリカで働いていました。
得意料理は…肉じゃがです。
こちらは友人が経験が生かせるんじゃないかと勧めてくれたので
参加しました。よろしくお願い致します。」
声がもともと低いので営業モードの声に切り替えて答えた。
半分は嘘だ。
名前、経歴はもちろん本当だが、
肉じゃがなんて作った記憶は2回くらいだ。
よく得意料理を聞かれるけれど
毎回適当に答えているので、同じ人にわざと同じ質問をされたら
全く違う答えになっているだろう。
得意料理って何?
って毎回逆に聞きたい気持ちになる。
そして、友達の勧めっていうのも嘘。
何となく働く場所を探していたら見つけただけだけど
少しは印象が変わるかと思い咄嗟に出た嘘だった。
依頼者のお宅に行き料理を作る、
ある意味飲食店で料理を作るよりも難しいかもしれない。
「ありがとうございます。とても素敵な経験をお持ちですね。
即戦力となっていただけそうです。
次は、なかおさんお願い致します。」
そのあとも、魔法学校の寮監の先生のような年配の女性や、
イヤホンを思わず外してしまった声の大きい韓国人女性、
アニメ声優のような可愛らしい声のおばさんが続いた。
どうやらみんな主婦で、子供に手がかからなくなったので、
という感じらしい。
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