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「ぐずぐずしないで出口見付けなさいよ!!」
ちなみに一番移動の速度が遅いのは奈津子である。
肩に担がれている教授と男子は各々限界近くなって、気絶中なので聞こえていても意識は朦朧としている。
チビッ子達は、動物系ゆえに奈津子のキンキン声が耳に響いて、引き込もってガクブルしているようだ。
「小娘が最初にいた部屋や道順を思い出せれば、出口候補も広がったけどね。一ミリも手掛かり覚えて無いんだもの、時間もかかるよ!!」
「あ~あ~足疲れたわ。ホント最悪、シャワー浴びたい、お腹減ったし、クッサイ獣いるし、めちゃくちゃ喉乾いたわ~。疫病神と一緒だと私まで被害に会っちゃうのよね!!」
妖狐がイライラと嫌味をいうと、奈津子は奈津子でガン無視して聞こえよがしに文句をいう。
とことん相性が悪いようだな~と律はぼんやりと眺めているけど、佳子と御先祖は自分達の進んできた痕跡を目を皿にして探している。
律は何処見ても同じにしか見えなくて、二人が「これじゃないですか?」『うむ、これはワシが擦れた痕やも知れぬ。よくやったぞ、娘。』と言っても違いが判らなかった。
そして、妖狐さんの嫌味は私の心にも流れ弾が!!
私もアチコチ走ったせいで何処ですか此処?状態です。
何分、化け物に出会った時のインパクト強すぎて、化け物しか覚えてないっす。
でもさー厄介なお化けだよね、改めて考えると。
口に出すと何か起こるかもだし、私なりに考察してみるんだけど、噂話で能力追加ってズルくない?
鬼のお兄さんは、影が薄いって特徴しかよく判らないけど、存在感が薄すぎてあのお化けを攻撃すると何故か存在感の薄さが移るらしい。
あのお化けは実体がないから、存在するって定義が薄くなるとそのまま消えていくみたい。
う~ん、よく判らん!!!( ・`д・´)
お兄さんが天敵なのは理解したけど、お化けの攻撃受けたらお兄さんは大丈夫なんだろうか?
私たちがここで色々妄想しちゃって、お化けに設定付けて強化しちゃうとお兄さんがピンチになるってことは何となく想像できるから、早く脱出したいんだけどな。
「あっ、この古い電話、私たちが最初に来た部屋に沢山有りましたよね?」
『でかした、徐々に周りの物の種類が見知ったものになった。油断はできぬが、どうやら同じような物はまとまって置かれているようだ。』
最初の場所に戻ってきたってこと?
なる程ね、私には全く違いが分かんないですね!!
て言うか、佳子さんはいつの間にか御先祖にお気に入りされている模様。
『我が末裔は、どうも大雑把で方向音痴で自由気ままながら、人並みに良心があるがゆえにお節介でな。ついつい無自覚に不測の災禍に巻き込まれよる。お主がしっかりした娘で助かる。誠に忝ない。』
「御先祖様!?それはほぼほぼ誉めてないですよ?いくら私でも、そこまでじゃない……はずです?多分?」
『何を申すか、この御転婆が!!殿が霊的なモノを避けるためにと付けた眼で厄介事を見付けてきおって!!見付けたら気付かれぬようにその者から離れよと言われておるのに、お主と来たら……はぁ、まあ、今更よのぉ。』ブツブツ
蒼白い顔で大柄な甲冑姿の御先祖が、なぜか萎んで見えたのは気のせいだと思いたい。
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