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「あぁ、驚かせてしまったかな? ごめんね、でも。珍しくてさ、このワールドに人がインしているの」
女の子なのに、声は男の子でした。
それに、ネネはまともな教育を受けていません。学校も仮想世界の中にあるからです。負担の少ない仮想学校もあるのですが、ネネはそれすらも受けられないのです。最低限の文字の読み書きはできるようになっていますが、話すことはできない。
そもそも、人と話す機会なんて無いのです。機械たちの発している言葉も、何となくしか理解していない。
「でも、どうやって入ってきたんだい? 普通の人たちのアカウントではバージョン対応していないから、公的なアカウントでは入ってこれないのに」
何を言っているのかわからないので、ネネはその人をじっと見つめます。すると、その人の頭の上に何か書いてあるのに気づきました。
『KUJOU』
彼の名前は九条アキト。漢字だったら、ネネは読めませんでしたが、ローマ字だったため、ネネはそれが彼の名前だと理解でしました。
「……話したくはないみたいだね。まぁ、違法アカウントであっても、こんな所じゃ悪さもできないだろうしねぇ。えっと、ネネさんか。マイクはオンにできます? 良ければ色々お話ししたいなぁ」
そうアキトが言ってもネネわかりません。その様子をみて、アキトは何かに気づいたように頷きました。
「そもそも、今の人は設定の方法なんて知らないか。これだと、オーディオの方もオンにしてないんじゃないか? 聞こえてますー? 聞こえてないみたいですねー?」
アキトは勘違いをしている。ネネの設定は完璧であり、ネネは喋ることもできるし、声も聞こえている。
しかし、その勘違いが功を成す。
『こんにちわー』
アキトは、マイクではなくチャット機能を使ってネネとの対話を図った。アキトのアバターから吹き出しがでてきてそこに文字が並んでいる。
ネネはそれを読んで笑顔になった。そして、右手を大きく振って見せた。
「あー、伝わった伝わった。やっぱ、聞こえてなかったんだなぁ」
『とりあえず、フレンド申請送りますね! 記念です』
そう言ってアキトがフレンドを送ると、ネネの耳にピコンッと軽快な音が鳴り、目の前に『KUJOUからフレンド申請が送られました』の文字が出ます。
よくわからないままネネは『受け取る』を選択します。
そして、アキトの元にネネの情報がわたりました。
アキトは、ネネのプロフィールを確認して驚きました。
「……なるほど。そういうことかぁ」
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