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そこには、先生があらかじめ設定しておいたネネについての情報が入っていました。彼女が重い病気を持っていてもうすぐ寿命が尽きること、教育を受けていないこと。
そして、彼女のいのちが尽きる前に、外の世界を見せたかったこと。
ここのワールドは、まだ仮想世界技術が進歩し始めた頃に小さなチームが実験として作った場所でした。そのため、彼女への負担はほぼ無い。
小さな田舎町を再現した狭いワールドだけれど、細部まで作りこまれていて、一時期サーバーが落ちるほど人が集まっていたこともあった。
しかし、そこから仮想世界技術は躍動する。もはや、人の意識そのものを仮想世界に送れるようになり、国がそのアカウントを管理するようになった。
そうなると、ワールドの方も多くの人の意識に耐えれるレベルのものが必要となる。
仮想世界を作っていた企業達は徐々に一つになっていき、最終的に『無限世界』と呼ばれる全人類が二十四時間活動しても動作し続けるワールドを生成し、それ以外のワールドは価値を無くしてしまった。
しかし、そのワールドにも少しだけ価値できていた。それは、意識とのリンクが無限世界と比べて弱いため、障害をもったネネのような者でも入ることができるのだ。
ネネの担当医は、国に申請を出すことでこれらのワールドにインするための旧式アカウントを発行してもらう権利を持っている。医療のために使うという名目で。
そうして、彼はアカウントを用意し設定を行い、ネネをこの旧式の仮想世界に送りこんだのだった。
彼女の短い寿命が尽きるまで、せめて暗く冷たい病室の中で寂しく死ぬことがないように。
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