1人が本棚に入れています
本棚に追加
ここは天国でしょうか? いいえ、現実です。
真っ白な部屋の、真っ白なベッドの上で、真っ白な服を着る黒髪の少女。窓から見上げる空は真っ青で健康的ですが、その部屋の中は何処か暗く寂しい雰囲気で包まれています。
彼女、茂上ネネは心臓に重い病気を持っています。
そのせいで、彼女は「あっちの世界」に行けません。あっちの世界に行くと、身体的負担が強いのです。少しの刺激で、彼女の症状が急変する恐れがあります。
彼女がぼーっと外を見つめていると、部屋に備え付けられた機械からレーザー光線が出て彼女を照らします。
定期診察です。たったこれだけで、彼女の身体的な情報が即座にデータ化されて「あっちの世界」の先生の元に送られます。
この世界では手術すら機械が行います。あっちの世界の先生が支持を出しながら、冷たいロボットが人間を解剖して人間を救います。
だから、彼女はずっと一人ぼっちです。生まれてこの方ずっと、一人ぼっちなのです。
仮想世界技術が大きく発展した現代。人々は一日の半分を仮想世界で過ごします。もう半分は、運動と睡眠の時間です。人々は仮想の世界の中で、仕事して、遊んで、交流しています。
そんな世界で、ネネは一人ぼっち取り残されています。これが生きていると言えるのでしょうか?
でも、そんな生活ももう終わりです。
彼女の寿命がわずかとなっていました。
この世界はすべてがデータ主義です。数字の上で世界が成り立ち、奇跡なんて言葉はまやかしでしかありません。だから、データの中で「もうすぐ死ぬ」とでたら、もうすぐ死ぬのです。
仮想世界の中でずっとネネを見ていた先生はさすがに、彼女に対してやるせない思いを抱いていました。そこで、先生はネネに一つプレゼントを贈ったのでした。
最初のコメントを投稿しよう!