第二章

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結局その日は男の足取りも身元もわからず、由奈は病院に連れていかれた。 検査をして打撲のみだったので、由奈は家に帰った。 翌日、事件の調書を作るから警察署に来るように言われ、気が重い。 一人暮らしの部屋にはいると、灯りも点けず座り込んだ。 なんでこんな目に遭うんだ。 自分がなにかいけないことをしたんだろうか。 会社の事を考えて、男が勤めている会社の人間だとは警察には言わなかった。 明日、上司に相談しようと思っていた。 知らず知らず涙が溢れてくる。 一生懸命生きているだけなのに、なんでこんな目に遭うんだろう。 重い体を引きずるようにして、ベッドに倒れこむ。 そのまま由奈は重い眠りに引きずり込まれていく。 男の顔がぐるぐるぐるぐる目の裏を回っている。 知らない…あんたのことなんて知らない… どんな落ちぶれた惨めな人生を送っていたって、それは自分のせいじゃない… なんで他人に八つ当たりするの? 翌朝、上司に電話し事情を説明した。 上司はすぐに調査すると請け負ってくれた。 そしてその男に心あたりがあるとも言った。 同期にその特徴に当てはまる男が居るというのだ。
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