第一章

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俺はただひたすら走っていた。 あれはそう… 駅で電車を降りた後だ。 俺の利用する路線の各駅停車に乗っていた。 時間はもう終電間際。 俺の住むところは都心から30分程だ。 特急や急行は、俺の住む処の駅に止まらない。途中で各駅停車に乗り換えねばならない。 だが混雑を避けるため、俺は都心の始発駅から各駅停車に乗っていた。 15分程時間はロスするのだが、ぎゅうぎゅうと知らない奴に挟まれているくらいならマシだ。 人気のないホームを歩いていると、背後に気配を感じた。 誰か俺の他に降りたっけ? そう思って後ろを振り返ると、誰も居なかった。 スニーカーの下の砂が鳴る。 「おっかしいな…」 薄ら寒くなって、ひとりごちるとまた歩き出す。 片方に担いでいたリュックを両肩に掛けると、改札口への階段を昇る。 その間も背後にずっと気配を感じていた。 なんだろう…今日はおかしな日だな… そう思って振り返ると、誰も居ない。 首をかしげながら改札に定期を当てる。 改札を出ると、一旦背後の気配はなくなった。 気のせいだろう。 そう思って、階段を降りた。
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