第一章

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しかしその手術で、医療事故が起きて、彩花は死んでしまった。 不幸中の幸いだったのは、麻酔中に亡くなったから、彩花は苦しまずに逝ったこと。 でも、それだけだ。 妊娠させたこともバレたし、勝手に手術したこともバレた。 向こうの親からは訴えられるし、親からは勘当されるし… 「まったくよ…何回か遊んでやっただけなのによ。マジになりやがってあの女…」 本命の女の胸に抱かれながら、俺は愚痴っていた。 「ふうん…アンタ、それで悪い男気取ってるつもりなの?」 女はブラジャーをしながら立ちあがった。 「な、なんだよ…だって、本当のことだろ?」 「本当のことだろうとなんだろうと、亡くなった人のこと、そういう風に言うなんて、最低ね」 パンティーを履くと、女はワンピースを被って、さっさっと部屋を出て行った。 「な、なんだよお…」 ドアが開いて、手だけ見えた。 俺が誕生日にプレゼントしたリングが飛んできて、それきり本命の彼女とは終わった。 「ちぇ…なんだよ…どいつもコイツも…」 大学はなんとか親の温情で行かせて貰うことになったが、生活費がない。 だからいつも終電間際までバイトしてた。 それだけの日々…
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