リリーが動かない理由

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リリーが動かない理由

昔、リリーが友達雲たちと肩を並べて、 風に乗って遊んでいた時、 リリーだけ山のてっぺんに引っかかってしまった。 友達雲たちは、 「先行くねー」 それだけ言ってどこかに行ってしまった。 リリーは数日間ひとりぼっちで山のてっぺんに引っかかっていた。 「かわいそうな子だね......」 雲たちみんなが気づかないフリをして通り過ぎていった。 リリーはなんとか自力で山のてっぺんから 抜け出そうと、 山に引っかかっていた右雲を 思いっきり引っ張った。 すると、リリーは分裂して小さい雲になってしまった。 それ以来、リリーは風がない場所を見つけて、 ここから動かないことを決めた。 「もう痛い思いをしたり、不便な目で見られるのは嫌だ。ここにいたら安全だから、もうここから動かない」 リリーは、つぶやいた。
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