*** 体験宿泊 4 side 紫朗 ***

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想ちゃんもすぐに「あぁ、亜朗の『カッコいい』と『可愛い』のイメージの違いでしょ? 」って琉架に聞く。 ────────と、亜朗の話題ならば、と言わんばかりに今の今まで静かに三つ子を見守っていた2年生3人が話しに加わってきた。 「えー♪何ソレどーゆー話題? 」 キラキラに目が輝いてる頼くん。 「俺も気になる。亜朗は『可愛い』の一択じゃない? 」 サラリと『可愛い』と思ってるという自分の想いをさらけ出した純介くん。 「それがさー、何かこの子達の亜朗のイメージ、『カッコいい』と『可愛い』で二分されてんだよね~」 『二分』を表してるんだろうけど、両手でVサインを作ってソレをチョキチョキ動かすってゆー可愛い事してる朱那くん。 けど、その指を両サイドから釉ちゃんと葉ちゃんに「可愛い事しないでください」ってすぐに押さえ込まれてしまった。 なのに「え? 今の可愛かった? 」って何故か嬉しそうな朱那くんに、「そうっスね。何かイラッとするくらいには可愛かったっスよ」「僕も自分でビックリするくらいイラッとしました」って冷めた対応の釉ちゃん葉ちゃん。 そんな2人が可愛いのか、『可愛い』と言われた事が嬉しいからなのか、朱那くんは怒る事なく「相変わらずだなー♪」ってケラケラ笑ってる。 …………仲良し、だなぁ……。 先輩に『可愛い』って言っちゃう釉ちゃんと葉ちゃん。 後輩に『可愛い』って言われたのに嬉しそうにしちゃう朱那くん。 三つ子と朱那くんが皐月に入学してすぐの付き合いなのかは知らないけど、皐月らしい距離感に見える。 片や自分は和解したとは言え、それは今日の出来事。 自分の思い込みのせいで三つ子からの『好き』に全く気付けていなかった俺との距離感とは違う。 俺がきちんと受け取れていなかったのが原因なのに、想ちゃんも釉ちゃんもさっきから少しスキンシップが多くなってる。俺に『好き』を伝えようとしてくれてる。 だから少し『配慮』というモノを感じる。そんな距離感。 その2つの距離感を比べるのは、相手やそれぞれの状況が違う以上意味のない事だって分かってるけど、遠慮のないその距離感がちょっと羨ましいなと思う。 ────────なんて、俺が1人でちょっと考え事をしてる間に想ちゃんが『亜朗の目』の話しを琉架達だけじゃなく頼くんと純介くんにも始めていた。 「亜朗って色素薄いせいか琥珀色の目ぇしてるんだ? 」 「ん~……確かに茶色っぽかったですよね……」 さすがに細かくそこまで覚えていないっぽい琉架が思い出すように眉間に皺を寄せて言う。 すると頼くんが「そこなんだよなー、琥珀色ってとこがポイントなんだよなー。うんうん」と腕を組んで頷く。 頼くんが一体何にそんなに納得してるのか、と不思議そうな顔をする琉架達に純介くんが笑顔で口を開いた。 「琥珀ってさ、宝石じゃん? 」 純介くんのその言葉には琉架達だけじゃなく俺も頷く。 「イギリスでは結婚10年目に旦那さんから奥さんへ琥珀を贈る習慣があるんだけど、」 おっと。 ここで突然の『皐月らしさ』という名の博識が飛び出してきそうな感じ。 という俺の予想通りの言葉を純介くんは続ける。 「その理由はね? 琥珀の神秘的な輝きがヨーロッパでは『幸福を招くもの』って信じられていて、つまり琥珀を贈るって事は『幸せを贈る』ってゆー意味があるんだよね♪ちなみに『琥珀婚』ってゆー節目の呼び方♪」 「「「「「「へ~! 」」」」」」 純介くんから聞かされた『琥珀婚』に思わず感嘆の声が漏れる俺ら。
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