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その時の俺は、まだ幼稚園に行ってなかったから3歳。
想ちゃんを『この人はそーちゃんだ』ってきちんと認識するその日までは、三つ子の名前をよく間違えていた。
千尋や三つ子とも一緒に遊ぶ事は勿論多かったけど、それでも3歳児の頭では顔が同じ三つ子を間違えずに認識するのは難しかったんだと思う。
間違えて名前を呼んで、「オレはゆーちゃんだよ♪」とか言われた記憶が何回もある。
その日は幼稚園が冬休みに入ったばかりの頃で、タイミングの悪い事に父さんは東京へ出張で不在。
そのタイミングで俺と亜朗が風邪を引いてしまった。とりあえず俺はインフルエンザではなかったと思う。
何でそう思うかというと。
俺は多分そんなに熱は高くなかったと思うんだけど、亜朗は結構な高熱が出てしまったっぽくて、母さんが亜朗だけもう1度病院へ連れて行ったから。
1回病院へ行ったけど亜朗の熱が上がったからもう1回ってゆーのは、多分インフルエンザの検査を受けに行くって事だったんだと思うんだよね。
そこに俺も連れて行くと、万が一にも俺もインフルに罹る可能性あるし、だから堂森家に預けられた。そういう事。
気持ちは元気だったけど、まぁ風邪引いて咳も鼻水も出てるし、体は健康ではないから俺は1人で用意された客室で寝てた。
スミレさんは20分に1回くらい様子を見に来てくれて、「ママとお兄ちゃんすぐ帰ってくるからね♪」とか、俺が不安にならないように色々と言葉をかけてくれた。
当然三つ子は俺のいる部屋には入る事を許されなかったはず。
その頃はまだ三つ子もちっちゃくて、1個下の俺と同じくらいで、風邪とか引きやすかったから。
うとうとしていたら、またドアがそっと開く気配がした。
スミレさんがまた様子を見に来たのかな、と思いつつも眠たくて目を開けられなかった。
そしたらゴソゴソと物音がして、枕元にどんどん何かが置かれてるのが分かって。
スミレさんじゃないのかな? って思ってうっすらを目を開けると、「おこしちゃった……? 」って小さな声が聞こえた。
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『……だぁれ……? 』
『そーちゃんだよ、しろう』
『そーちゃ……? 』
『うん』
『そーちゃ、おへや、はいったら『めっ! 』って、ゆわれるのよ……』
『うん。でも、しろう1人はさみしいでしょ? 』
『…………ぅん……』
『だからオレ、しろうにオモチャとか、いっぱいもってきたよ』
『『おもちゃ』……? 』
『うん。パズルもあるし、ボールもあるよ。テレビゲームはこのへやにテレビないからもってきてないけど、ト○カもプラ○ールももってきた』
『わぁ……! ほんとにいっぱいねぇ……! 』
『あとコレ。このヌイグルミ』
『!! コレ、そーちゃの、だいじだいじじゃなーの? 』
『いーの。しろうカゼひいてコンコンでててカワイソーだし、1人でさみしくないよーにコイツもつれてきた』
『そーちゃ、ありぁとうね♪シロ、うれし、ゴホッ……! 』
『ぁ、し、しろうダイジョーブ!? 』
『ケホッ、ゴホゴホ……っ! 』
『しろう……! くるしい!? えっと……み、水のむ!? 』
『だ、だいじょぶ……ケホッ……』
『……とまった……? 』
『ん、とまった……♪』
『よかった♪……ぁれ? しろうねむたい? 』
『……ぅん、ちょっと、ねむたい……』
『じゃあ、ねんねしな? オレもういくから』
『……やだ……ねんね、しない……』
『なんで? 』
『……しろ、ねんねしたら、そーちゃ、ばいばいする、て……ゆった……』
『じゃあしない。バイバイしないよ? 』
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