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本名の『豊雄』と呼ぶと、何故か声どころか存在自体を無視される。
俺からすれば漢字も『豊か』と『雄々しい』なのでカッコいいと思うのだが、本人は『トミー』と呼ばないと返事をしないのだから『トミー』と呼ぶしかない。
トミーは24歳だが、年下の俺らにも親しく接してくれるイイ奴だ。
というか、王一族の諜報部は全体的にノリが良い。
諜報活動をメインとしているから、話術に長けている者も多く情報収集の速さは他同業の中でもトップクラス。
話し上手聞き上手なのだから、喋っていてノリが良いと感じるのは当然と言えば当然か。
とにかく、そういった部分は俺達『影』とは少し違うところ。
俺達はなるべく表に出ないようにするし、出たとしても気配を消し目立たないようにする。
しかし王一族の諜報部は堂々と敵の中に入ってゆくこともある。さすがに「王一族です」とは名乗らないが。
王一族には『隠密』というものもきちんと存在している。
本来ならこちらの方が我々と同業と言うべきなのだろうが、その『隠密』は代々総代ただ1人にしか忠誠を誓わない。
総代以外の者は王一族であっても、『隠密』の゙姿を見ることすらできないのだそう。
だから『隠密』とは一切連絡も取れないし、そもそも連絡先は王一族の総代しか知らない。
つまり『隠密』は伝説の゙生き物レベル。
ということなので、俺達が『影』の同業として繋がっているのは諜報部なのである。
『王一族の諜報部はある意味花形だからね〜♪気合入った奴しかいないわけよ♪』
「諜報部が『花形』って……」
「ジョシュア、言いたいことは分かるぞ……」
『ははは♪確かにそうなんだけど、実際そうだからな〜♪まぁオリヴァーやジョシュアみたいな『影』は『隠密』って形で別にいるわけだし? 』
「俺気になってたんだけど、王一族の『隠密』って何人いるん? 」
『ジョ〜シュア〜♪ソレ、俺が知ってると思う? 』
「まぁトミーは諜報部のエースなわけだし? 」
『そう言ってくれんのは嬉しいけど、残念ながら全く分からん! 』
トミーの実力を持ってしても全く分からないなんて、『隠密』が『隠密』すぎる。
……でもまぁ、もしかしたらトミーはわざと分からないと言っている可能性も否定はできないのだが……。
『まぁでも……1人ってことはないな……少なくとも2人はいると思う♪』
ぁ、可能性潰れた。
例え見立てだとしてもソレを言うということは、特に隠す気はないのだろう。
「そう思う理由は何? 」
それにしても……。
ジョシュアの奴さっきからガンガン行くな……。
『それはね〜♪』
そしてトミーもしっかり答える、と……。
『王一族に有利な条件で物事を進める為に俺ら諜報部が色々探ってる中で、急に王一族に有利な条件で良いって言ってきた世の実力者がいてさ♪それが、いっぺんに10人くらいいたんだよね、世界各地に♪』
「あぁ、それはさすがに何かの力が働いたと思うよな」
『でしょ? 総代は「や〜良かったよね〜♪」って喜んでたけど、さすがに違和感あるじゃん? 』
「トミーに勘付かれてることに王氏は気付いてないとか? 」
『ないない、それはない♪総代が気付いてないはずがない♪つまりさ? 何も言ってこないのが逆に存在が疑わしいくらい見えてこない『隠密』の仕業、って言ってるようなもんじゃん? 』
「「確かに」」
『だから俺からは勿論何も言わない。俺が何も言わないことを総代も分かってるから総代も何も言ってこない、ってことよ♪』
「そっか! 」
「そうなるな」
そういう空気を読むのは本当に日本人は上手いと思う。王氏は中国人ではあるが、もはやほぼ日本人だし。
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