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「でもさ、だとしても、そんな急に10人も条件変えたんならかなりバレバレだったんじゃねーの? 」
ジョシュア、ホントお前ガンガン行くな?
まぁ、俺も知りたいから止めはしないが……。
『それはね〜♪そもそもその事に気付いたの俺とリーダーだけだからってのもあるかな♪』
「10人もいっぺんに、なのにか? 」
ぁ、つい俺も……。
『そりゃね♪相手も露骨に態度変えてきたわけじゃない。向こうさんにも向こうさんの身内への体面もあるから、一見自分達に不利だなんて見えないように策練ってきたってこと♪そこまで細かく気にしてやるなら、『隠密』が1人だったら目が行き届かなくて裏をかかれる可能性も出てくる。そんなリスク背負ってまで王一族の『隠密』がたった1人でいっぺんに10人も相手にすると思う〜? 』
「「絶対しない」」
『だろ? だから最低でも2人はいると思うんだよね♪』
「「確かに」」
うん。確かトミーの言う通りだと思う。
でも、今トミーが小さい声で「……まぁ、『隠密』は未知だからもしかしたら1人で、って可能性もゼロじゃなんだけどさ……」と呟いた内容も、確かに、とも思う。
結局、『分からない』なのだ。
『っと、話しだいぶ逸れちゃったけどさ、まぁ侯爵閣下の心配は理解した。その上で、なんだけど、亜朗くん絡みじゃなきゃこの相談受けた俺が諜報部のリーダーと相談して、総代には事後報告でも大丈夫なんだけど……その、ね? 分かるだろ? 』
「……やっぱり亜朗様絡みだと、王氏が直接関わってくる……ということだよな」
『そういうこと! 』
トミーは明るく返事をしたが、俺とジョシュアとしては王氏と直接話しをするのは出来れば避けたいと思った。
何故なら、俺とジョシュアはガルガンド侯爵家の影である為、仲が良いとはいえ王氏に直接顔を見られたくない。
しかしトミーの立場もある。トミーへ相談した以上、トミーの提案は受け入れるべき。
王氏に顔を見られたくないから、とこちらの身勝手な理由で今回の相談をなかったことにすることはできない。
何よりグレイソンファミリーの名に賭けて、アーサー様とセオドア様の憂いを晴らさなければならない。
電話は最終的に、トミーから王氏へ。そして王氏からアーサー様へ一旦連絡をするという形で終わったのだが、アーサー様も王氏も大変忙しい方の為なかなかアーサー様と王氏が話しをする機会は設けられないまま時間が過ぎていった。
「やぁ♪キミ達があのグレイソンファミリーの次期族長候補か♪」
王氏との通話の第一声はコレだった。
──────────とはいえ、王氏から俺とジョシュアの顔は見えていない。
姿を見て話しがしたいという王氏のたっての希望からビデオ通話ではあるのだが、俺とジョシュアは首から上が見切れている状態。
王氏が「影なんだから顔だけは出さなくていいよ♪」と、恐縮至極なお言葉をくださったからだ。
トミーから王氏へ話しがあがり、王氏からアーサー様へ連絡が来たのは3日前。
そしてなんと、その時に王氏はアポイントを取り付けた上で、この通話の前日にアーサー様とセオドア様に会いに来た。
ガルガンド侯爵邸での会食という形で直接話しをし、王氏とアーサー様とセオドア様は『亜朗様』という共通の尊い存在を通じ、我々『影』と王一族の諜報部同様あっという間にとても良好な関係を築くことが出来たという。
良好な関係ではあるが、正直アーサー様よりも王氏の方が立場は上。
アーサー様はイングランド国内に於ける権力はそれなりにあるし、日本を含めた数カ国に於いては事業を行っていることもあり、事業に関わる部分ではそれなりの影響力もある。
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