*** オリヴァー・バイロン ***

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しかし、王氏に於いてはアーサー様の比ではない。 王一族は簡単に言うと世界中に影響力がある。表の世界だけではなく、裏も含めると世界の7割ほどの国に繋がりがあるらしい。 正直、全貌は分からないし検討もつかないほどだ。 それほどの権力と影響力を持っておきながら、彼は本当にお優しい人だった。 ある意味で裏社会がメインである俺とジョシュアへのご配慮もそうだが、後日聞いた話しだとアーサー様とセオドア様にもとてもお優しかったそう。 会食の際、立場の差を理解した上で対応をしようと出迎えたアーサー様とセオドア様に、まず「緊張しないで〜? 」と笑ったそうだ。 そして、前ガルガンド侯爵閣下への改めてのお悔やみの言葉と墓前に供える為の花を手配してある、と。 切り花の花束では、当日すぐに行ける距離に墓がないと折角の花を台無しにしてしまう。アーサー様もセオドア様もすぐには行けない。 しかし王氏は直接花を持ってくるのではなく、「手配してある」と言った。 墓前に行く時に花屋に連絡だけすれば良いように手配をしてくださっていたのだ。つまり代金を払っておいてくださった。 前当主様の葬儀で一度会ったことがあるだけの自分達への配慮に、アーサー様もセオドア様も感銘を受けた。 それからの会食は、まるで仲の良い親戚同士のような雰囲気だった、と給仕を担当した者やイアン様から聞かされた。 「─────────て思ってね? あまりいかにもな手土産だと、周りから余計な詮索されるかなーと思ったから知り合いの家に遊びに行く感じで、パリでお菓子を買ってから来たんだ♪手土産がお菓子なんかでゴメンね? 」 「いえいえとんでもありません! 本来なら我々が手土産を持参して出向かなければならない立場ですのに! 」 「う〜ん♪アーサーもまだ堅いなぁ♪」 「しかし……」 「もっと気安く喋ってくれて構わないのに♪ね、セオドア♪」 「グッ……、しょ、正直それは……」 「はは♪まぁ少しずつだね♪俺はキミ達が息子でもおかしくない年齢なんだし、親戚の叔父さんくらいの気持ちでさ♪」 「「は、はい……」」 最初はこんな感じだったらしい。 「え!? アロはそんな早くに喋り始めたんですか! スゴい! 」 「デショー♪俺もビックリ♪」 「アロは相当頭が良いのですね♪」 「頭良いよあの子はホントに♪それに可愛いし♪」 「「王氏に同意です! 」」 「ぁ、可愛いと言えば、亜朗が4歳の時の幼稚園の発表会でウサギの格好してる最っ高に可愛い写真あるんだけど……」 「「ウサギっ!? 」」 「見たい〜? 」 「「見たい!! ですっ!! 」」 「あはは♪ほら、コレ♪」 「「か……ッッ!! 可愛いッッ!!!!! 」」 「だろ〜♪」 途中はこんな感じで、遂に食事の後のティータイムでは…… 「颯懍さんが買ったきてくれたこのダコワーズすごい美味しいです♪」 「フランスのダコワーズはやっぱり美味しいですよね♪颯懍さんの好きな店のとかですか? 」 「ふふ〜ん♪実はこのダコワーズ、亜朗が好きなんだ♪」 「「えっ!? そうなんですか!? 」」 「フランス出張のお土産として初めて買ってったのは亜朗が6歳の時♪亜朗このダコワーズ一口食べたっけ「サクッてしてフワフワでとけた! おもしろい! おいしい! おもしろおいしい! 」って大興奮で♪」 「「ぇ……カッワ……」」 「ぶはっ♪だろ? そん時の反応可愛すぎてフランス出張の時は絶対コレ亜朗のお土産にすんの♪」 「「なるほど〜♪」」 「……亜朗の好きな物……アーサーとセオドアに知って貰いたくて……♪」 「「…………はい♪ありがとうございます……♪」」 最終的には『王氏』から『颯懍さん』に呼び方が変わるくらい仲良くなったそう。
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