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そしてその後、今回の相談の件の話しがあった。
アーサー様から聞いた王氏の話しはこうだ。
「つい先日、亜朗がバレー部の大会の応援で邑咲体育館に行った」
それについては俺もジョシュアも当然自分の通っている学校のことだから知っていた。
「そこに、キミ達の知る『亜朗が死のうとした』理由のキッカケとなった事件の関係者が偶然居合わせた」
……それは知らなかった……。
側にいなかったことが悔やまれる。
「でも、俺の友人数名と、キミ達も知っている大吉、彼が創った青葉連合というチームのメンバーのお陰で亜朗は無事守られた」
塩原 大吉様はガルガンド侯爵邸の庭を造ってくれた人だから俺達も知っていたが、その時初めて塩原様の創ったという『青葉連合』というチームの存在を知った。
「その『青葉連合』の中に、来年皐月に入学予定の奴が1人いる」
つまり、そいつは俺が卒業した後、亜朗様を見守る役割を任せられる可能性がある人。ということ。
「正直、亜朗の両親や祖父母、俺を含めた亜朗の父親の親友達は皆、亜朗のことは心配ではあるけど亜朗を監視するような真似はしたくないと思っている」
確かに俺とジョシュアは亜朗様を監視していると言える。王氏はそれを良く思っていないのか。
「何故なら亜朗には広い意味で自由でいて欲しいから。アーサーとセオドアの言う『死のうとした環境』に今も亜朗がいるのは確かで、あの時から何も変わっていない」
こう言った時の王氏の表情は、酷く悲しそうだったとアーサー様が言っていた。
「だけど、亜朗自身は間違いなく変わっている。強くなっている。けど、少し脆い部分が出てきているのも事実。だからこそ、今の状況から抜け出そうとするのか、それとも耐えるのか……そういう意味でも亜朗に自由に選んで欲しい」
そうは言っても、亜朗様があの幼馴染み達から離れるところは想像しにくい。
ほんの数ヶ月見てきただけの俺やジョシュアでさえそう思うのだから。
「でも……亜朗が今の状況から抜け出そうとする可能性なんて……ほぼないんじゃないかとは思っている……」
やはり王氏もそう思っていらっしゃったか……。
「そうなると、亜朗の脆い部分から亜朗が崩れかねない。そう危惧していたところに今回の話しを貰った。俺は亜朗を父親目線で見ているところもあるから、亜朗自身の選択を尊重したいという気持ちと亜朗が崩れる前に無理矢理大人の力でどうにかしようか、という気持ちの間で揺れ動いていた」
王氏にとって亜朗様は自分の息子のような大切な存在であることを知り、俺まで苦しくなった。
愛しているからこそ、見守りたい気持ちと手を出したい気持ちがせめぎ合うのだろう。
「例え偶然であったとしても、ガルガンド家の影が在籍している学校に亜朗が入学し、アーサーの命で亜朗を見守ってくれているのを聞いて安心した。自分は監視を付けるような真似はしたくないと言っておきながら、誰かがソレをやってくれていることに安心したんだ」
でもそれも全て、王氏が亜朗様を本当に大切に想っていることの証明にしかならない。
「だから、俺自身は監視を付けるような真似はしたくないとはいえ、アーサーとセオドアのことを止めさせるつもりは一切ない」
……良かった……。きっとアーサー様とセオドア様も安心しただろう。
あれ? でもそれってつまり……
「同時に、その青葉連合のメンバーに積極的に亜朗を見守る役割をやらせるつもりもない」
そういうことだよな……。
自分はそういう真似をしたくないのだから……。
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