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「そこで、だ……。皐月学園に通っているというガルガンド家の影と直接話しをさせて欲しい」
────────────ということで、俺とジョシュアが王氏と直接話すことになり、その第一声が「やぁ♪キミ達があのグレイソンファミリーの次期族長候補か♪」だった。
「お初にお目にかかります王様。オリヴァーと申しま─────────」
「あぁ……っ! 頭下げなくていいよ! 顔見えちゃうから! オリヴァーねオリヴァー、オッケーオッケー! 」
敬意を表する為、腹に左手を当て軽く頭を下げようとしたら王氏の声に止められてしまった。
「ご配慮いただき、誠にありがとうございます」
「いいよいいよ♪俺だって自分のとこの隠密の顔晒したくないしね♪」
俺が見ているパソコンの画面には、権力の大きさに見合わないほど、少年のような屈託のない笑顔の王氏が映っている。
それを一緒に見ている隣のジョシュアに視線を送り、挨拶を促す。
「王様はじめまして。僕はジョシュアと申します」
頭を下げるのは止められるので、腹に左手を当てるだけにして挨拶をするジョシュア。
「ジョシュアね♪オリヴァーとジョシュア、2人ともカッコいい名前だな〜♪」
……すぐに名前を褒めてくれるとか……イイ人すぎないか……?
液晶に映っている王氏の両隣にはアーサー様とセオドア様。3人がいる部屋には見覚えがない。
ガルガンド侯爵邸ではなく、恐らくどこかのホテルの一室だと思われる。
王氏が宿泊するホテルと考えると、ロンドンにあるザ・ゴーリングあたりだろうか……。
王氏にも護衛付いているはずだし、ガルガンドの護衛もアーサー様とセオドア様に付いて行ってるはずだから心配は不要なのだろうが、主が予定になかった場所にいるのは些か不安になる。
「アーサーとセオドアも、俺が泊まってるホテルに来て貰ってる。ガルガンドの護衛も、王一族の護衛もいるから安心して♪ちなみにホテルはザ・ゴーリングね♪」
……この方は人の頭の中を読めるらしい……。
表情が見えているならまだしも、首より下の上半身しか見えていないというのに何故俺の不安に気付いたのか。
影としての訓練の一環として、心理状態から影響を受けて出る無意識の仕草なども一切出ないようにしてある。今も一切体を動かさなかったのに……。
やはり王氏は只者ではない、ということだけが分かった。
「主人が予定外の場所にいたら心配になるよね♪俺よく行方不明になって、「予定にない所に勝手に1人で行かないでください! どれだけ心配したと思ってるんですか! 」ってめっちゃ怒られるから分かるよ♪大吉の海外出張に勝手に着いて行ったりするからガチで行方不明なる♪」
…………ただの経験者だったか……。
というか、誰にも言わずに海外に行くとは……王氏の護衛の胃の状態が心配だ。
亜朗様が聞いたら間違いなく亜朗様から胃薬が出されるところだろう。
俺が王氏の護衛の胃の状態を心配している横で、ジョシュアは「ン゛ふ……っ♪」って笑ってる。
コイツはなかなか神経が図太い。勿論俺も神経は細くはないし、どちらかというと影をやってることもあり太い方だとは思うが。
…………まぁ……アーサー様とセオドア様も笑ってるんだけどな……。
「えーと、じゃあ本題入るけど」
!!
よし、ここからは王氏から俺とジョシュアへ。
依頼というか提案というか、だな。
「アーサーとセオドアから話しは聞いてると思うけど、俺は亜朗を監視するような真似はしたくないというのは今現在も思っている」
「「はい……」」
勿論しっかりとそのことは聞いてある。
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