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王氏自身は『亜朗様を監視するような真似はしたくない』。
それは王一族総代としての意志ではなく、亜朗様を父親のような目線で見ているからこその意志。
亜朗様には自由でいて欲しいという想い。
しかし、王氏は同時に『ガルガンド家の影が見守ってくれていることに安心した』。
自分では選び取れなかった選択肢を、誰かが選び取ってくれていることで生まれた想い。
それも父親目線だからこその想い。
どちらも王氏が亜朗様のことをご自身の子供のように思っているからこその気持ち。
その2つの気持ちの間で揺れる王氏が、いつまでもどちらかを選び取れないのは当然だ。
『スゴく我儘を言っている自覚はある。自分は手を出したくないクセに、誰かがやってることには乗っかろうとして……。でもそれも積極的にじゃなく、って……いい大人のクセに自分の我儘にオリヴァーとジョシュアを巻き込もうとし─────────』
「ワガママじゃないですよ」
「え……? 」
王氏の言葉を遮った俺にジョシュアが慌てて「ちょ、オリヴァー……! 」と肩を掴んできたが、それに構わず言葉を続ける。
「王様は亜朗様をご自分の子供のように想っておられるのは俺もジョシュアも存じております。そんな王様が亜朗様が自由な選択をして生きて行くことを願うのは当然です」
『オリヴァー……』
「しかし、亜朗様のあの自己犠牲の精神は、正直やや理解しがたいところがあります。日本人の美点だとしても、あまりにも……」
「オリヴァー……!! 」
『いいよジョシュア♪……オリヴァー、続けて? 』
再度俺を止めようとしたジョシュアを止める王氏。
「そんな、どこか不安定な亜朗様を心配するのは当たり前だと思います。愛しているからこそ、大切だからこそ、己の感情の全てが向くものです。自由を願う気持ちも、反対に不自由になるとしても幸せに向かえそうな選択肢を用意したくなる気持ちも。全ては王様が亜朗様を愛しているからこそです」
『……うん……そうだね……』
王氏が弱々しく微笑む。
すると王氏のその弱々しい微笑みを見たジョシュアも「ぉ、俺もそう思います……! 」と話し始めた。
「オリヴァーの言っていることは俺も同じように思います! だから王様が迷い、悩むのは当然です! それだけ亜朗様のことを想ってらっしゃる証拠です! 」
『ジョシュア……』
「だから王様は全然ワガママじゃないです! 1つだけを選ぶことが出来ないことを『ワガママ』だとおっしゃるなら俺もワガママです! 俺は日本の和菓子が気に入りました! 特にあんこが好きです! こし餡とつぶ餡、どっちも好きでどっちかだけなんて選べません! 」
『『『ぶふ……っ♪』』』
アーサー様、セオドア様、王氏が吹き出した。
「俺は日本のカップラーメンが好きです。どの味も好きですが、特にとんこつ味と味噌味が好きです。でもジョシュアと同じようにどっちかだけなんて選べません」
『『『ぶはぁ……っ♪』』』
俺の言葉にも盛大に吹き出す3人。
「でも、俺はそんな自分をワガママだなんて思いません。とんこつも味噌もどっちも選びます。手にしておいて、その上でその時その時に食べたい方を選びます」
『……確かに……ソレは我儘ではないな……』
「ええ、だから王様のそれも我儘ではございません。亜朗様を想う王様が今持っておられる選択肢は、そのどれも間違っているとは思いませんから」
「そうです! どれを選んでも亜朗様の為になっています! 」
『……ふたりとも……』
そう。
そういうことなのだ。
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