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「王様がお持ちの『全ての判断を亜朗様に任せて何もしないこと』、『亜朗様を守る為に手を出すこと』、『亜朗様を守ろうとするアーサー様とセオドア様にほんの少しのお知恵を貸してくださること』、それのどれもが亜朗様の為というただ1つの想いからであります」
『……うん……』
「亜朗様の為にならない選択肢であれば、間違っているとして切り捨て、どれか1つを選ぶべきなのでしょうが、どれも間違っていないのです」
「間違っていないなら、捨てなくとも良いと俺とオリヴァーは思います! 」
俺とジョシュアの言葉を聞いて、アーサー様がゆっくりと口を開いた。
『颯懍さん……その上で、ですが……』
画面の向こうで王氏がアーサー様を見詰める。
『最善がどれなのか分からない状況の颯懍さんが1つを選べないのは、今オリヴァーやジョシュアが言ったように当然のことです。アロを愛しているからこそ、自分の選択が最善である自信が持てない中、俺とセオドアにわざわざ日本から遠いイギリスまで会いに来てくださり、そしてオリヴァーとジョシュアと直接話しをすることを選んでくださった……』
王氏がアーサー様を真剣に見つめ、アーサー様も真摯な眼差しを返す。
自分の大切な存在である亜朗様を、同じかそれ以上にやはり愛している王氏に、自分がどれほど亜朗様を大切に想っているかを伝えるような……真摯な瞳。
『……そんな颯懍さんの今回の選択が、最善だったと思えるようにします……』
『アーサー……』
『……アロへの愛故に迷い、愛故に悩み、愛故に踏み込めない……、それでも愛故に俺達に示してくださった颯懍さんの選択……俺達が必ず最善のものにします』
『…………ぅん……』
『アロを守ります。お約束いたします、必ずアロを守ります』
『……ぅん……うん……』
王氏の瞳が、柔く、優しくアーサー様を見詰めるその光景はとても美しかった。
─────────────ということがあり、その後王氏から『天津 謙信』のことを教えていただいた。
『青葉連合』というチームに属していることを含めた彼の人となりも聞き、彼の風貌を知っておきたいとジョシュアが言うと、王氏はわざわざスマホに写真も送ってくださった。
そして、彼が『S.S.G』に参加するという情報とともに、王氏は俺とジョシュアがその機会に接触を計ってはどうだ、と提案をしてきた。
王氏が俺とジョシュアと直接話しをしたがった理由はそこにあったのだ。
勿論その選択肢しかないということで、俺は早速『S.S.G』に潜り込むことにした。
ノブレス・オブリージュの精神の強いレジー様に『卒業してしまう我々だからこそ、受験予定者達にかれてあげられる言葉もあるだろう』とか、『生徒会はクリスマスパーティーの準備もあるし、少しでも手助けできればと思う』などと言えば、レジーは笑顔で頷いてくださった。
レジー様には申し訳ないが、俺1人が手伝いを申し入れても恐らく『生徒会メンバーでもないのに申し訳ない』と断わられていただろうから利用させて貰った訳だ。
3人というまとまった人数、ましてやレジー様がノブレス・オブリージュの精神に則り申し入れたとなれば、断わられる確率は格段に下がる。
と、いうことで。
結果は見事謙信をこちらに引き入れることに成功した。
「上手くいって良かった〜♪」
「あぁ♪」
「オリヴァー喋んの下手だから心配してたんだよ、トミーと」
「トミーに心配されるのは分かるが、ジョシュアに心配されるのは不服だ」
「俺はそのオリヴァーの言葉が不服だよ」
「……ふは♪ま、謙信イイ奴だったぞ♪」
「うん♪ぁ〜早く俺もケンシンに会いたい♪」
「早速食事の予定たてるか♪」
「うんうん♪そーしよー♪」
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