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*** アーサーとセオドア side others ***
12月4日、月曜日。
毎月講堂にて行われている全校集会。
ビッシリと並んでいる椅子にきちっと座る生徒達。
全校集会がある日はきちんと制服を着なければならない。
ズラッと並ぶ皐月の制服を着た少年達は普段の何倍も賢く見えた。
壇上にいる大地はいつも、この光景こそが未来への希望だと思って見ているのだが、口にしたら最後、千尋や三つ子に茶化されそうなので口に出したことはない。
この全校集会は、本来であれば毎月1日の5時間目に行われるものなのだが、12月1日は理事長の大地がどうしても外せない用事で出張に行っていた為、週明けの今日、講堂にて行われている。
『─────────ということで、レジーくん達貴族社会に身を置く生徒や、既に侯爵閣下として対面した事がある生徒にはなかなか難しいとは思う。けど、他の生徒達はなるべく普通の高校生として交友をして欲しいと思います』
理事長である大地の言葉に講堂内が僅かにザワつく。
そのザワつきは当然、今名前を出された伯爵家長子のレジーの周辺も。
「レジーレジー」
「うん? なに、悟」
「ガチで難しいん? 侯爵様と学友として仲良くなるの。つっても俺らはどーせすぐ卒業だけど……」
「『難しい』というか、ボクの心が無理だと叫んでるね♪」
「ぉ、おぉ……そんなにか……。イーサンも? 」
「あぁ、爵位が下の者から声をかけるのは不敬だしな」
「ぁ、それマジなんだ? 」
「「マジだよ」」
悟が隣のクラスのレジーとイーサンからこうして聞いた話しは、周囲の生徒達にも勿論聞こえているわけで。
その内容に貴族階級のリアルさをほんの少し感じ取った生徒達は、今度来るガルガンド侯爵閣下に対する興味が良くも悪くもかなり増しているように見えた。
『レジーくん達や面識のある生徒に無理は言わない、という点を含めてこのことはアーサーくんとセオドアくんからの希望でもあります』
侯爵閣下本人の希望だと聞かされれば、その他大勢の生徒達はますますアーサーとセオドアに興味が湧いてくるのは当然だろう。
「なぁなぁノリ」
「ん? 」
「ノリ会ったことある? パーティーとかで」
ノリとノリのクラスメイトの会話。
話題が話題だけに、この会話に参加はせずとも興味深そうに話しを聞いている周りの生徒達。
「あるぞ」
「どんな人? イケメン? 」
「2人共めちゃくちゃイケメン。スゲーカッコいい」
「へ〜♪金持ってて権力もあってイケメンとかマジすげぇな♪」
今回の全校集会では、いつも通り今月の行事を始め、試験の予定や任意で受ける資格試験の日程など勉学関係の話しの他、大地から毎度毎度生徒への叱咤激励、それから生徒会からの連絡事項などがされるのだが、今日はそれに加えてアーサーとセオドアについての話しもあった。
その中で、皐月の生徒として在籍はするがそれでも失礼になることがないように、今のガルガンド家について大まかにどういった立場であるか、の説明もされていた。
ガルガンド侯爵家は英国貴族の中でもその歴史は古く、由緒正しい家系であること。
現在の当主はアーサーであることと、弟のセオドアは養子であり、2人は同い年であること。
手掛ける事業は多岐に渡り、イギリス国内では相当な力を持っていることに加え、日本でも新たな事業を始めた事など。
──────────というのを聞いていたからこそ、ノリのクラスメイトの今の発言。
「そういうのもスゴいけど、あのお二人の魅力は優しさだな。17歳とは思えないくらい紳士だし」
「おぉ! ジェントルマン! 」
ノリの言葉が聞こえていたレジーとイーサンが『うんうんうんうん』となかなかの速度で頷いている。
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