*** アーサーとセオドア side others ***

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侯爵家の者であるアーサーとセオドアに対してこのような動きをするのは、レジーを始めとする同じ貴族である10人の生徒だ。 その中には、緊張からか小さく手が震えている者もいる。 それを見た生徒から、ゴクリ、とまるでその緊張がうつったかのように生唾を飲み込む音。 講堂内の全ての人が見詰める中、レジー達が礼をしたまま待ち構える所まで来ると、先導していた喬二、アーサーとセオドアの3人は歩みを止め、喬二はアーサーとセオドアの横に移動。 その時のほんの数秒、レジー達の誰も頭を上げず、誰も言葉を発さないことで、先程のイーサンの「爵位が下の者から声をかけるのは不敬」という言葉が全員の頭を(よぎ)った。 立ち止まり、レジー達を見詰めるアーサーとセオドアに講堂内の全員の視線が注がれる中、アーサーがニコッと笑った。 「レジー様、イーサン様、ヘンリー、お久し振りです♪どうぞ頭を上げてください♪」 「「「はっ! 」」」 『お久し振り』と面識のある3人にまず声をかけるアーサー。 「アーサー様セオドア様、お二人ともご健勝のようで何よりでございます♪」 「「ありがとうございます♪」」 レジーが代表して声をかけ、アーサーとセオドアも笑顔を返す。 「アーサー様セオドア様、恐れながらこちらに控えている7名がご挨拶差し上げる機会を与えていただけないでしょうか? 」 そう言ってレジーが手の平で指し示したのは、アーサーから声をかけられていない為未だ頭を下げたままの7人。 ……勿論その中にはガルガンド家の影であるオリヴァーとジョシュアも含まれるのだが……。 普段の学園での様子とは違い、レジーの貴族然とした振る舞いに、椅子に座ったままの生徒達はやや緊張した面持ちでアーサーとセオドアを見詰める。 レジーのその声、その言葉、その振る舞いから敬意を持っているのが分かるからこそ、許可を求めるレジーにアーサーとセオドアがどう返すのかが気になるのだ。 他の生徒達からのそんな視線の意味に気付いてるか気付いていないのかは分からないが、アーサーとセオドアはレジーに向けて柔らかく微笑んだ。 「この場は私の取り仕切る場ではありません。ですので、鷹取社長が許可するのであれば私は全然構わないのですが……」 そう言ったアーサーが自分達の横に立っている喬二を見ると、喬二は頭を下げている7人を見て「挨拶しないとソコから動けなさそうだし、サクッとね♪」と頷いた。 「鷹取社長、ありがとうございます♪では、簡単で構いませんので♪」 喬二の方から再びレジー達の方へ顔を向けたアーサーの言葉を聞いて、オリヴァー達7人は顔を上げる。 その時、セオドアがチラリとアーサーに視線を送ると、アーサーはセオドアに肯定の意味を含んだ視線返し、セオドアは「申し訳ないが」と、スッと片手を上げる。 「はっ。いかがなさいましたか、セオドア様」 「レジー様、そこにいるオリヴァーとジョシュアの挨拶は省いて貰いたい」 「ぇ……」 セオドアの言葉に、レジーだけではなくイーサン、ヘンリー、そして講堂内の生徒達も驚く。 「セ、セオドア様……っ、こ、このオリヴァーとジョシュアが、な、何か失礼をしましたでしょうか……!? 」 挨拶を省くという事が、よもやオリヴァーとジョシュアとは関わりを持ちたくない───────つまりは過去に何か失礼な事をしたのではないかと思ったレジーは慌ててオリヴァーとジョシュアをアーサーとセオドアの視界から隠すように移動し、セオドアに問う。 そんなレジーを見たセオドアは「レジー様は相変わらずお優しい方だ♪」と微笑むと、レジーは「勿体ないお言葉です」と言いつつも、オリヴァーとジョシュアを庇っている。
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