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オリヴァーにしてもジョシュアにしても。
今のは全て演技。
喬二はサプライズと言っていたが、この2人にとっては前もってアーサーとセオドアと打ち合わせ済みのこと。
オリヴァーとジョシュアと同じ空間にいるのに、親しくない間柄の人間として接したくはないというアーサーとセオドアの希望により、『実は2人は〜』というのを早々に周知させる為に組まれた芝居である。
「オリヴァー……ジョシュア……」
アーサーが感動したように瞳を潤ませ、オリヴァーとジョシュアの名前を呼ぶ。
ここまでくれば、レジー達は自分達も結局はオリヴァーやジョシュアと同じような役割りを持って皐月に通っているる訳なので納得をし、他の生徒達は『アイツら……いい奴じゃん……グスン』な雰囲気である。
そんな雰囲気の中、「あの〜……」と、挙手と共に椅子から立ち上がる人物が1人。
「「一樹っ!? 」」
その人物を見て、その名前を呼んだアーサーとセオドアに、先程の『会ったことがある』というノリの言葉が聞こえていなかった生徒達の驚いて見開かれた視線が集中する。
ということで。
今立ち上がった人物は則元 一樹である。
オリヴァーはノリと仲良くなって以降、アーサーとセオドアも仲良くなっておくに越したことはない人物だ判断し、ノリのことを伝えていた。
それを聞いたアーサーとセオドアは、ノリが参加するパーティーに何度か参加し、偶然を装い去年辺りから仲良くなっていたのだ。
「アーサー、セオドア、久し振り♪」
「あぁ! 久し振りだな一樹♪」
「こないだのパリのパーティー以来だ♪元気そうだな♪」
「アーサーとセオドアもな♪」
アーサーとセオドアの側に来たノリが2人と握手と軽めのハグで挨拶を交わす。
「の、則元くん……アーサー様とセオドア様と知り合いだったんですか……」
他大勢の生徒同様、アーサーとセオドアと親しげに挨拶を交わしたノリを見てレジーも驚いて声をかけると、ノリは「去年くらいからな♪」と笑った。
レジーに笑顔を見せたノリはそのままの笑顔でアーサーとセオドアに向き直る。
「アーサー、セオドア」
「「うん? 」」
「2人とも。別に謝らなくていいからな? 」
「「ぇ? 」」
2人のキョトンとした顔を見て、ノリは言葉を続ける。
「だってさ、オリヴァーとジョシュアがガルガンドの家の者だって知ったとしても、ほとんどの生徒は貴族社会とかそこでの常識とか知らない日本の一般人だから『へー、そーなんだ』ぐらいしか思わない。知ってようが知らなかろうが、俺らの態度はなんも変わんないし」
「「そう? 」」
「あぁ。それに、オリヴァーとジョシュアはガルガンド家の為の仕事してたんだろ? 家の為に皐月に入学してくるのなんて、ぶっちゃけ皐月の3分の2の生徒はそうだし? 」
そこでアーサーとセオドアが生徒達に目を向けると、結構な人数の生徒が大きく頷いていた。
「それを言う言わないはそいつ自身の判断や、親の意向だったりとか。それぞれ事情ってもんがあるんだから別に謝ることじゃねーよ、ってこと」
「「そっか……♪」」
「あぁ。オリヴァーもジョシュアも、俺ら他の生徒も。同じ環境の奴は沢山いるんだから謝る必要なんて全くねぇよ」
「分かった♪」
「ありがとう、一樹♪」
ノリの言葉に感謝を示したアーサーとセオドアは、改めて講堂内の生徒達の方を見ると、ニコニコと笑ってくれている生徒の多さにホッとし、「皆さんもありがとうございます♪」と、謝罪ではなく感謝の気持ちで頭を下げた。
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