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その理由は『亜朗だから』とも言えるし、『アーサーとセオドアだから』とも言える。
感覚的なモノで、明確且つ具体的な理由ではないのだが、どうしてもそう思わざるを得ない。
その優しく柔らかな光景を見ていたノリは「ふっ♪」と笑うとアーサーとセオドアに声をかける。
「アーサーもセオドアも、桜岡と小さい頃に会ったことあるんだな♪」
「「あぁ♪」」
「どこで会ったんだ? イギリス? 」
「「いや、日本だ♪」」
「そうなんだ? 観光? 」
「「いや、アロのお祖母様の家で♪」」
「は? 桜岡のばあちゃん家? 何でまた……」
ノリが疑問に思うのももっともで、何故イギリスの貴族が日本の桜岡家を訪れるのか。
亜朗の祖父の慈朗が何やら世界的に発言力のあるフィクサーのような存在である事は、先の体験宿泊の時の琉架の涙の件でほとんどの生徒も知ってはいるが、それでも一個人の家にまで行くとは、一体どのような関係があるのだろうと全員が疑問を抱く。
ノリの不思議そうな顔を見たアーサーとセオドアはニコニコの笑顔で声を揃える。
「「ガルガンド家と桜岡家はだいぶ遠いが親戚関係にあるからな♪」」
えぇぇぇぇぇぇェェェ~!?!!?!?? ―――――――――――
と、講堂内が大きな驚きの声で包まれた。
「さ、桜岡!? そ、そうなの!? 」
驚きすぎたのか、自分の淡い恋心が今にも破れそうなことがショックなのか、アイザックが亜朗の肩をガシッ! と掴んで振り向かせる。
その力の強さにアーサーとセオドアのこめかみがピクリ、と動いたのを見逃さなかったレジー。
「アイザックやめなさい。そんなに引っ張ったら桜岡くんが痛いでしょう? 」
「ぁ……、申し訳ありませんレジー様。桜岡もゴメンな? 痛かったよな」
「大丈夫ですよ、アイザック先輩♪レジー先輩もありがとうございます♪」
すぐに手を離し謝ったアイザックに笑顔で対応し、自分にお礼を言ってくれた亜朗にレジーは「いいえ♪」と笑顔を返す。
次にチラリとアーサーとセオドアに視線を移せば、2人と目が合って満足そうに微笑まれたことに、レジーはアイザックの無事が確保されたことに胸を撫で下ろし、2人に軽く頭を下げた。
「てか桜岡。マジでガルガンドの遠縁の親戚なの? 」
「ぁ、ぃや……俺、知らなかった、です……」
ノリに聞かれ、申し訳なさそうにアーサーとセオドアを見る亜朗に、アーサーは「まぁ、ホントに遠縁だからね♪」と亜朗を安心させるようにニッコリと笑い、その横でセオドアが「ガルガンドと桜岡はさ? 」と、未だに驚いている全員に聞こえるように話し出した。
「時は西暦1902年まで遡る。その年、何があったかはここにいる全員分かっていると思うが……」
そう言って、セオドアが生徒達の方を見ると「日英同盟! 」と複数の声が返ってきたことに笑顔で頷く。
「そう。その日英同盟が結ばれた年に、日本人と結婚すると言って当時のガルガンド家の末の娘が日本に渡ったんだ」
「昔から日本の文化に興味があり、物凄くアクティブな人だったと聞いている。四女だったこともあり、当時の当主は娘の好きなように生きることを許し、日本へ見送った」
「その年には良い人を見付け、あっという間に結婚したそうだ♪その子孫が……アロ、キミなんだ♪」
セオドアがそっと亜朗の手を取り微笑む。
「し、知らなかった……」
「本当に遠縁だからね♪その娘はレティシアという名で、その子供が………………なんて名前だったっけ? アート」
知識として頭に入っていたはすが、亜朗との再会に浮かれすぎてしまったらしい。
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