*** アーサーとセオドア side others ***

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ルーベンの低く、穏やかで、優しい声色で。 『何を言うテディ。テディのせいなど、あるはずがないだろう? 』 優しくそう言って、頭を撫でて。 それでも泣く自分に、父は笑顔を見せてくれただろう。 『よしよし♪それじゃあ家族は3人になってしまったけど、幸せになろう♪可愛い可愛いテディのお陰で私もアートもにしよう♪』 そうしてきっと、父は自分を抱き締めてくれて。 アーサーも『テディはバカなことを言うなぁ♪』と笑って抱き締めてくれる。 ……飽くまで可能性─────────いや、自分の空想の話しだが、それでもこういう道もあったはずだと思うほど、自分は確かに父に愛されていたのだ……。 確かに愛されていたというのに、1人で嘆くばかりで、何もしてこなかった自分が悔やまれる。 もし……の話しであっても、数多ある未来への道筋の1つとしては、確実にあったはずの道だと思える。 その道に……3人で進んで幸せになろうとする道に進んでいたならば、父は今でも生きていたかも知れない。 亜朗のお陰で自分を取り戻したとはいえ、だからこそがむしゃらに仕事に打ち込み、自身の体調を気に掛ける余裕もないほど頑張らなくとも良かったのかも知れない。 ……父を守れなかった分は、亜朗を守ろう……。 ……愛してくれた父に、この先返せなくなった愛は、亜朗に返そう……。 改めてそう心に誓ったセオドアは亜朗の手を力強く握る。 「……テディ……? 」 セオドアの手に力が籠もったのを感じた亜朗は、セオドアをじっと見詰める。 「……改めて俺は、騎士としてアロにこの忠誠を捧げたい。どんな時も、どんなことからもアロを守り、アロの幸せだけを考え、アロに尽くし…………アロがを俺が必ず守り抜く……」 「……っ、……」 「……どうか……どうか俺の忠誠を受け入れて欲しい……」 あまりに真剣な声で。 泣き崩れていた時と同じ体勢なのに、セオドアは本物の騎士かと思えるほど凜としたオーラを纏っていた。 ここまで真剣に、再度忠誠を受け入れて欲しいと乞われては、亜朗の方も真剣に考えざるを得ない。 数秒無言になった亜朗の真剣な表情に、講堂内の全員の視線が注がれる。 アーサーがガルガンド家の過去を話す間も、セオドアが自身の気持ちを吐き出している間も一貫して一度たりとも顔を上げず、ただずっと亜朗への忠誠を示し続けていたセオドアに生徒達の気持ちは傾き、亜朗がその忠誠を受け入れてくれることを願っている表情。 アーサーとレジー達貴族も、どうか受け入れて欲しいと、祈るような気持ちで亜朗を見詰めていた。 スーっ、と息を吸った亜朗はセオドアの手を一度ギュッと握ってからすくっと立ち上がる。 セオドアの手は余分な力が抜けたのか、立ち上がった亜朗の手をそっと下から支えるだけ。 「わ、分かりました……! ぉ、俺はテディの忠誠を受け入れます……! 」 「アロ……っ!! 」 アーサーが嬉しそうに亜朗を呼ぶ。 「でもっ! 条件があります! 」 「……『条件』……? 」 その亜朗の声にセオドアの手はピクリと動き、アーサーは不思議そうに亜朗を見詰める。 「テディも必ず! 幸せでいられるようにしてください! 忠誠をくれたテディが幸せでないのは絶対に有り得ません! もし! テディの幸せの為に、俺が邪魔になったなら迷わず俺への忠誠は捨ててください! 俺がテディの忠誠に値しないと思った時は、迷わず俺を切り捨てること! コレは絶対に譲りません! 」 ……声を張っているのは、そうしないとこの言葉を言えなかったから……。
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