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……勢いを付けて言わなければ、むしろ自分はセオドアから忠誠を貰えるような人間ではないのだと逃げ出したかったから……。
…………本当は……セオドアの忠誠など受け入れたくはなかった……。
ただ、言ったことは本心。
自分の為に誰かが不幸になること、自分のせいで誰かが傷付くことはあってはならないこと。
最低な自分のせいで、こんなにも心優しいセオドアを不幸にするわけにはいかない。
(…………だから……、いつでも俺を見捨てて大丈夫だからね……テディ……)
受け入れなければテディはこの体勢のままだと聞かされた以上、亜朗には受け入れる以外の選択肢はなかった。
だがそれでも、亜朗はそのまま受け入れることは出来なかったのだ。セオドアがいつでも自分を捨てて幸せになれるように、その道だけは絶対に今、示さなければならないと判断した。
生徒や教員、多くの人間の目がある今。
ガルガンドの当主であるアーサーを始め、セオドアと同じ貴族の目がある今。
そういった亜朗なりの覚悟があった言葉だったのだが────────────
「うん分かった♪じゃあ結婚しよっか♪」
─────────────忠誠を受け入れて貰えたセオドアは、ようやく顔を上げてニッコリと笑った。
「………………はぃ? 」
「「「「「「「「「は? 」」」」」」」」」
あまりに軽いノリのセオドアに亜朗のみならず、何人かの生徒達も「は? 」の声。
その反応を見ても、セオドアはニコニコ。
「……ぇ、と……テディ? 」
「ん? 」
「ぁの、俺の出した条件……ちゃんと聞いて……くれてた……? 」
「モチロン♪聞いてた聞いてた♪」
ニコニコしてそう返すセオドアを、亜朗は心底不思議そうな表情で見詰める。
「……ぇーと……聞いてたなら、なんで『結婚しよっか』なの、かな……? 」
「『なんで』って……そんなの分かり切ってること聞く? 」
「ぇ……? 」
首を傾げた亜朗。
それを見たセオドアは、自分の手に乗ったままの亜朗の手をくいっ、と軽く引っ張り口元へと持ってゆく。
また手にキスをされると思った亜朗は「テ、テディ……っ!? 」と、慌てて手を引こうとするがセオドアはそれを許さず手に力を籠める。
「言ったよね? アロのこと愛してる、って」
「っ、……」
「アロが俺の忠誠を受け入れくれたから俺はアロの側にいられる♪愛するアロの側にいられるなら俺は幸せ♪一生アロの側にいて幸せであり続ける♪ほら、俺の幸せはもう保証されてる♪」
「そ、そう、なる……?」
「なるなる♪俺がアロの側に一生いて、アロも俺も幸せになるっつったらもう結婚しかないじゃん♪」
「……それはちょっと飛躍しすぎじゃないかなぁ……」
若干遠い目の亜朗を見たセオドアはクスクス笑う。
「ま、モチロン今すぐってわけじゃなく、『いつかは』ってことだけどね♪」
「……来るかなぁ、その『いつか』……」
「ふふ♪まぁそれでも……───────」
クイ、と亜朗の手を引き、素早くキス───────セオドアもしっかり親指を挟んで───────をした。
「───────俺はアロを愛してるよ♪」
「モチロン俺も愛してるよ♪」
ガシッとセオドアの肩を抱いたアーサーからも間髪入れずに『愛してる』の言葉。
ニカッと笑った2人の笑顔はまるで本当に血の繋がった兄弟のようにそっくりだった。
それを見た亜朗は、いつもの調子ならば真っ赤になり、まともな言葉を紡げないほど動揺するはずが、この時ばかりは「……ふは♪ホントに『生まれるまえから仲良しって神様が決めてた』んだね♪」と笑ってしまった。
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