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そうすれば、ガルガンド家を慕うアースキン家の嫡男であり、自分自身もアーサーとセオドアを慕うレジーが、亜朗を『婚約者』に望むアーサーとセオドアの側につくこと。
そして、物腰が柔らかく、性格的に自分から積極的に交友関係をどんどん広げることはないが、それでもレジーの常に誠意のある立ち振舞いや優しく穏やかな性格から、人から慕われる人間であるレジーがアーサーとセオドアの側につくと分かれば、他の貴族達も遠慮なくレジー同様に2人の側に立つことを示す。
全くもって予定通りであった。
昔と違い、家門同士が敵対するということは現代ではほとんどないが、事業者として競い合うことはある。
そんな中でアーサーとセオドアが婚約者に望むのが日本人であり、ガルガンド家の遠縁の親戚でもある亜朗という事実は、彼らにとっては重要な情報だ。
亜朗の祖父が、謎に包まれてはいるが世界的に見ても影響を持つフィクサーのような大きな存在であることは、先の体験宿泊の時に知った。
その慈朗の孫であり、かのラントランドル公爵閣下であるハンスが亜朗を『心の恩人』と言っているのは、つい先日生徒会室からの帰りの会話で知っていた。
とすれば、現段階でハンスはアーサーの後見人ではあるが、ガルガンド家が本当に亜朗を迎え入れた場合、恐らくハンスはアーサーが成人してもガルガンド家から手を引くことはないだろう。
もし迎え入れなかったとしても、親戚であるのは変わらない。亜朗がガルガンド家の『命の恩人』であることも変わらない。慈朗との繋がりも消えない。
アーサーとセオドアが桜岡家から縁を切りたいなどと、親戚関係を絶ちたくなるほどのことをする可能性は、2人の亜朗への想いに加えハンスが亜朗の後ろにもいることを考慮すればほぼゼロに等しい。
それに、ガルガンド家は『命の恩人』である亜朗、ひいては桜岡家に大恩がある。
ガルガンド家に亜朗が本当に行ったとしても行かなかったとしても、アーサーとセオドアが高校の中とはいえ、将来的に日本国内、または国内のみならず世界的に発言力を持つ可能性のある生徒と、数名ではあるが貴族の目がある前で亜朗を婚約者に望む発言をした以上、この先ガルガンド家と桜岡家との縁が薄くなる可能性は極めて低くなった。
日本での事業を大きく展開しようとしているガルガンド家は、このことをキッカケにもしかしたら慈朗の伝手などを借りることになるかも知れない。
そうすればますますガルガンド家は大きくなってゆくだろう。
つまり、元よりガルガンド家と縁があるレジーは当然としても、今この場にいる貴族達にとって自分の目の前で起こった求婚劇はアーサーとセオドア側に立つべきか否かを一瞬で判断しなければならない出来事。
今現在のガルガンド家の力に慈朗とハンスの力も加わる可能性を考えると、ガルガンド家と比べるまでもない自分達の実家にとっては、今息子の自分が明確にアーサーとセオドア側に付くことを示すことがこちらの利にもなる。
同じ学園に通うことになったとはいえ、2人はおいそれとお声がけをできる相手ではない。本来であれば会話をすることすら叶わない。
折角の機会ではあるが、普通ならばガルガンドとの縁は作れないほど差がある立場。
しかし、今ならばアーサーとセオドア側に付くことで縁を作るチャンスだ、と判断した結果が今。
アーサーとセオドアは、そこまで予想した上で今、この場で亜朗に想いを伝え、あっという間に貴族達からの後押しを得ることに成功したのだった。
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