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すっかり馴染んだ様子で楽しげにしているアーサー達の元に、またも近付く複数の人影。
「何なに〜? お茶会開催されてんの〜? 」
「俺も紅茶飲みた〜い♪」
「めっちゃいい香り〜♪オリヴァー、俺らもいい? 」
「アーサー様、セオドア様、この3人は俺と同じクラスなんです」
「「オリヴァーがお世話になってます♪」」
「「「いえいえ♪こちらこそお世話になってます♪」」」
「さあ、どうぞ♪お掛けになってください♪」
「「「わーい♪楽しみ〜♪」」」
こうして、アーサーとセオドアは一切亜朗と絡むことなく初日の昼休みは過ぎて行った。
昼休みでなければ放課後はさすがに亜朗に絡みに行くだろうと思った生徒は多い。
しかし、アーサーとセオドアはいとも簡単にそれを裏切るのだった。
「あれ? アーサーとセオドア外出すんの? 」
「あぁ♪実はソレ、いいなと思って♪」
「ん? このサンダル? 」
「そう♪履いてる人多いし、きっと履きやすいんだうなと思って同じの欲しくなって♪」
「「ぇ、何ソレ可愛い……♪」」
「「あはは♪ありがとう♪」」
「買いに行くの着いてってあげよーか? 」
「どこに売ってるとか───────ぁ、もしや桜岡と一緒? 」
「いや? アロは生徒会だろう? 」
「それにジョシュアが一緒に来てくれるから大丈夫♪気持ちはすごく嬉しいよ、ありがとう♪」
「「ぁ、ううん♪」」
あれ?
と、首を傾げる生徒多数。
あれだけの愛の告白、ましてや積りに積もった11年分の想いが籠もった告白をしておきながら、一向に亜朗の所へ押しかけないアーサーとセオドア。
それどころか、その後無事にサンダルを購入して帰って来たかと思えば、「日本の駄菓子をいっぱい買って来た! 」と瞳をキラキラに輝かせていくつもの袋を抱え、クラスメイトどころか多くの生徒と共に談話室で駄菓子パーティーを始める始末。
「ぁ、コレ美味しい♪」
「アーサーそれ俺も好きー♪」
「名前は……何て読むか教えてくれる? 」
「蒲焼さん◯郎♪」
「カバヤキサンタローか♪覚えた♪」
「俺はコレ好きかな♪」
「セオドアくん、それは──────」
「ぁ、『セオドア』と呼び捨てで構いませんよ、先輩」
「ぁ、うん、ありがとう♪じゃあセオドア、それは麩菓子だよ♪」
「フガシ……フガシ……なんか強そうな名前ですね♪先輩♪」
「ふは♪そうかもね♪」
「……なんかセオドア、『先輩』って呼ぶ時スゲー笑顔じゃね? 」
「ぇ、だってイングランドでは日本と同じ意味での『先輩』って敬称がないからなんか……嬉しくて♪」
「「「「「えぇ〜可愛い〜♪」」」」」
「アーサーも? 」
「そうだね♪新鮮で嬉しいよ♪」
「確かに英語だと、一応『先輩』はsenior、『後輩』はjuniorで括れるけど、意味は単純に『年上』『年下』ってだけだもんな」
「「そうなんだよね♪」」
話してみたら話してみたで、人懐こいアーサーとセオドアの株は急上昇。うなぎ登り。
そうして、はた、と気付く。
今までは亜朗の幼馴染み達に加え、マコシューを筆頭にもはや執着と言えるレベルで亜朗にベッタリくっついている人間を見てきた自分達の感覚こそがおかしかったのだと。
人を傷付けたくないと思うあまり、そういった輩を拒否できない亜朗に付け込むかのようにベッタリしている方が、どちらかと言えば少々おかしいのだと。
「……アーサー、セオドア。このお菓子さ、桜岡帰ってきたら少しあげたら? 」
「「アロに? 」」
「そうだよ! 頭使って疲れてるから、そうだな……ぁ、チョコなんかいいと思うぞ! コレ! チョコマシュマロ♪」
「……疲れて帰って来るところに押掛けるなんて……」
「うん……迷惑じゃないかな?」
全く乗り気ではない表情の2人。
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