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「「「「「そんなことないって!! 」」」」」
その反応に、思わず駄菓子パーティー参加者達から大きな否定の声。
「絶対大丈夫! むしろ喜んでくれるよ! 」
「そうそう! 喜びこそすれ迷惑だなんて桜岡は思わないって! 」
「……じゃあ、アロだけにというのは他の生徒会の皆さんに失礼だから、生徒会の皆さんにお渡ししよう♪」
「そうだな♪それが1番いい♪疲れてるのは皆さんも同じだろうし♪」
「「「「「「ええ子や〜♪」」」」」」
気軽に渡せばいいだろうに、と思いつつ、こうまで配慮のある2人の株はますます上がりまくり。
──────────こうして、アーサーとセオドアの思惑通りに皐月の生徒内に2人の良い印象が広まってゆく。
敢えて亜朗の所へ行かず他の生徒達との交流を深めている理由は、亜朗に相応しい人間が自分であると他大勢の生徒達に後押しして貰う為である。
しかしながら勿論、『学生を楽しみたい』というのも本心ではあるので、極力早く馴染む為という目的もあるのだが。
――――――――――――――――
そうして生徒会役員が帰寮すると、頼まれなくとも誰かが「アーサー! セオドア! 桜岡帰って来たぞー! 」と知らせてくれた。
「アーサーセオドア♪行こっ♪」
「「はい♪朱羽先輩♪」」
「おっ先〜♪」
「ぁ! コラ真っ! 」
アーサーとセオドアに笑顔で声をかける朱羽。
ダッシュで談話室から飛び出して行く真。
駄菓子パーティーには『TOP OF THE 亜朗オタク』のマコシューもしっかり参加していたらしい。
朱羽と真としては、アーサーとセオドアと直接言葉を交わすことで少しでも等身大の2人を知り、亜朗の相手に相応しいかどうかを勝手ながら探るつもりであったのだが、結論から言うと今のところは『申し分ない』の一言だった。
『TOP OF THE 亜朗オタク』として、亜朗の幼馴染み達、自分の弟達を含めて亜朗を好いている人間を見てきたが、高位貴族という立場で育ってきたことも関係するのだろうが、やはり線引きがきちんとしているという印象。
試しに朱羽が「もし亜朗がアーサーかセオドアを好きになって、でも貴族社会なんて無理だから爵位を捨てて欲しいって言ったらどうする? 」と聞いてみた。
するとアーサーもセオドアも「それは出来ない」とキッパリ言い切った。
その上で更にこう言ったのだ。
「今の地位があってこその自分。この地位はアロを幸せにできると思っている」
「この地位があるからこそアロを守れると思っている。アロを守る為の1番の武器を手放すことなどしない」
「何もかも手放し、本当にそれでアロを幸せにできるのか。正直自信はない。ゼロから何かを生み出すのは大変なことだと知っているから」
「アロを守れる確証もないのに全てを手放すことは、アロを不幸にするかも知れないという可能性が出てくるということ。その可能性はゼロでなくてはならない」
「確かに、2人で手を取り合いゼロから頑張ることも悪くはないと思う。でもそれは俺達が選んでいい選択肢ではないんだ」
「俺達はアロに愛されることを望んでいるわけではない。アロが幸せになることを望んでいる」
「ならば、アロを不幸するかも知れない可能性があるなら、例えアロが愛してくれたとしてもその手は取らないと断言できる」
「守りたいのであれば、いっそ遠ざけた方がいいこともある。傍にいることが相手の為になるとは限らない。つまり、もしもそのようなことになれば、アロの幸せの為に完全にアロの前から消える」
「アロはその時は傷付くだろうが、それもほんの束の間。遠くからアロが幸せになれるよう尽力する。それが俺達の答えだ」
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