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重たい答えだと思った。
しかし、亜朗を幸せにする。その覚悟があると思った。
ゼロからどころか、マイナスから家門を立て直した2人だからこその言葉だった。
亜朗と相思相愛になることよりも、亜朗が幸せであることが最優先されていた。
何よりも誰よりも、自分よりも。
亜朗だけが大切。
亜朗に愛されることより、
亜朗が幸せであることが自分の幸せに直結する。
不幸になるかも、という可能性と同時に、
それでも幸せになれる、という可能性もあるにも関わらず。
むしろ見方によっては、亜朗を捨てるとも捉えられるにも関わらず。
愛した人が消え、悲しむことになっても、
それでも最期には必ず幸せにするという覚悟。
ただ真っ直ぐに、亜朗の幸せだけを。
(…………うん……いいな……)
潔い覚悟がある。
自分を大切にできない亜朗には、このくらい覚悟を持って徹底的に亜朗の幸せを考えてくれる人がいいのかも知れない。そんな気がする。
不幸になるかも、という可能性すら許さない覚悟。
自分のことより亜朗のこと。
(……なんか……似てるのかも、亜朗と……)
亜朗に訂正を持ち掛けなければならないな、と思う。
自分と真のところに来るのは、『誰か1人を選べなくてどうしようもなくなったら』の時だけじゃなく。
『好きな人にフラれたら』。『好きな人がいなくなったら』。
幸せを願ってくれる人の為、『幸せにならなきゃ』、『幸せになろう』と思うなら、と。
アーサーとセオドアが亜朗の幸せを望むからこそ消えるなら、その望みに出来る限り手を貸そう。
「亜朗ーーーーー!! お疲れ様今日も尋常じゃないくらい可愛いねぇぇえぇぇぇっっ!! 」
談話室を出て左手に走り、玄関に亜朗の姿を見付けると叫びながら亜朗を抱き締める為に両手を広げて突進する真。
その後ろ姿を見てアーサーとセオドアはクスクス笑っている。
「妬かないの? アイツ亜朗に抱き着こうとしてるけど」
「自分の慕う相手が多くの人から好かれているのは嬉しいことですから♪それに、真先輩はとても嬉しそうに笑ってますし♪」
「ん? どゆこと? 」
「俺達を救ってくれた時から何も変わらず、アロは素敵な人だと周りの皆さんが笑顔でいることが証明してくれているようで……見ていてとても心が暖かくなります♪」
亜朗に抱き着こうとしたが、想と頼に阻まれ、暴れている真を見てクスクス笑いながらも、きちんと朱羽の目を見てそう言ったアーサーとセオドア。
分かっていたつもりのアーサーとセオドアの亜朗に対する愛情の向け方に、朱羽は一瞬言葉を失った。
本当に心から亜朗の幸せを思うからこそ、亜朗だけではなく周りも良く見ている。
確かに、亜朗と話しをしている人はよく笑っている気がする。
声を出して笑うだけではなく、楽しそうに、嬉しそうに。機嫌が良さそうに、リラックスしたように。
様々ではあるが、皆亜朗の側は居心地が良いと証明するかのように笑顔でいることが多い。
「…………俺が、って……思わないの? 」
「モチロン俺もテディも自分の手でアロを幸せにする、と思ってはいます♪でも、それも時と場合ですね……」
「俺達はアロを独り占めしたいわけではないんです。だからアロがああやって沢山の人に囲まれて笑っていることが嬉しくて幸せなら、その場を守ることでアロを幸せにしたいんです♪」
「今はそう思ってても、いつかは嫉妬するようになるかもよ? 」
端からは意地の悪い質問に聞こえるだろうが、朱羽としては悪意があるわけではなく、そうなる方が人としては自然だと思ったから言ったまでのこと。
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