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だからまさか─────────────
「そうなる時はきっと、アロへの敬意が揺らいだということなのでアロを口説くことはやめます」
「嫉妬ほど醜い感情はないと思っていますから、そんな感情を持つ自分がアロを幸せにできるとは思いませんし……」
───────────こんな答えが返ってくるなんて思ってもいなかった。
少し驚いたが、次の瞬間には自分の発言が2人を傷付けたかも知れないと気付く。
彼らの父が詐欺に遭ったのも、もしかしたら身分に貴賤なく恋愛結婚をしたことに『嫉妬』されたからかも知れない。
もしかしたら彼らの父がやっていた事業絡みで発生した『嫉妬』、という線もある。
いずれにせよ、奥さんを亡くし、そのことで既に心を病んでいたところに付け込むように詐欺を仕掛けるなんて、明らかに徹底的にガルガンド家を潰そうという悪意が働いている。
『嫉妬』という感情に対して、僅かな嫌悪感を滲ませる2人に朱羽は「……ごめん……」としか言えなかった。
「くっそ……! 亜朗に近付けねぇ……っ! 」
「早々に散れよお前」
「えっ!? 弟が冷たいっ! 」
「真先輩、さっさとお帰りやがれ」
「想ちゃんも冷たくない!? 」
「「いつも通りだろ(ですよ)」」
「ひどい……っ! 」
頼と想から冷たくあしらわれている真の後ろに現れた人影。
「ぁ! アーサーくんとセオドアくん! ……と、朱羽かよ」
頼と想が守っていた亜朗の後ろにいた朱那がその人物の名前を呼ぶ。
「ちょっと朱那、俺の顔見て嫌そうにすんのやめてくんない? アーサー、セオドア、朱那は俺の1つ下の弟なんだ♪」
「そうなんですね♪お顔、似てらっしゃいますね♪」
「朱羽先輩も麗しいお顔ですけど、シュナさんも麗しいお顔ですね♪」
アーサーとセオドアから『麗しい』と評された及川兄弟は、少し頬を赤くして「ぅ、『麗しい』、って……」と照れている様子。
その様子を見ていた親臣がクスクス笑いながらアーサーとセオドアの前に歩み出る。
「アーサーくん、セオドアくん。同じクラスとはいえ、生徒会長としてのご挨拶が遅くなり申し訳ありません。改めてまして西園寺 親臣といいます。気軽に親臣、と呼んでいただけると嬉しいです♪」
「これはご丁寧にありがとうございます♪改めまして、アーサー・フィンレー・ガルガンドです。こちらも是非アーサーと呼んでください♪」
「セオドア・アーロ・ガルガンドです♪俺も気軽にセオドアと♪」
親臣がそれぞれと握手をし、「既に打ち解けていらっしゃるようで安心しました♪」と言うと、真が口を開く。
「アーサーとセオドアさ、皆結構履いてるサンダル見て、皆と同じのいいなーってジョシュアと一緒に買いに行ったんだよ♪可愛くね? 」
「「「「「ぇ、可愛い」」」」」
思わず口を揃える生徒会の2年生5人。
「み、皆さんが履いてらっしゃるということは、それだけ履きやすいということですらかね♪」
「ジョ、ジョシュアとオリヴァーも同じの持ってるって聞いたから……」
『可愛い』と言われたことに少し照れた様子で話すアーサーとセオドアに好感を持つ5人。
とはいえ、元々悪い感情は持っていないが。
「ぁ、俺も自己紹介♪俺は仁科 頼♪真の弟です♪頼って呼んで♪」
「「真先輩の弟御!? 」」
「ぉ、『弟御』なんてそんな大層な呼び方されるモンじゃ──────」
「『大層な呼び方されるモン』でしょーよ! 俺の弟だよ!? 何言ってんの!? 」
「耳元でうるせーよテメェ!! 」
頼が抱き着こうとしてきた真の顔面を鷲掴み、近付かせないようにするのを見てクスクスと笑うアーサーとセオドア。
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