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「とても仲がよろしいのですね♪」
「仲良くないからっ!! 」
アーサーの言葉に対して、ギリギリと真の顔面を押しやりながら頼が叫ぶと、朋と純介が両サイドから「照れるな照れるな♪」と言って頼の肩をポンと叩く。
「てっ、照れてねぇし……っ! 」
「「はいはい♪」」
「な、んだよ純介も朋もその顔〜ぉ! 」
「べぇっつに〜ぃ♪」
「てか俺らにも自己紹介させてよ♪」
ニマニマ顔の朋と純介がアーサーとセオドアに向き合う。
「綿貫 朋、祖父がラントランドル公爵閣下と友人なんだ♪」
「それって『ナオ ワタヌキ』かい? 」
「そ♪」
「ハンスおじ様から良く名前を聞くよ♪」
「じゃあこっちはこっちで仲良くしよ♪アーサー、セオドア♪」
「「あぁ♪宜しく、トモ♪」」
「喜多 純介♪呼びづらかったらジュンでも何でもいいよ♪同い年だし、砕けた話し方してくれると嬉しいかな♪」
「「モチロン♪ありがとう♪」」
朋と純介も挨拶が済み、残るは亜朗を除き千尋、想、葉の3人となったが、当然この3人は11年振りの再会にも関わらず亜朗に婚約を申し込んだ人物として敵意とまではいかないにしても、多少アーサーとセオドアを警戒しているのだが……。
「柊 千尋です♪学年は1つ下ですが年齢はお二人と同じですので仲良くしていただけると嬉しいです♪」
「堂森 想といいます♪こっちの葉と、生徒会に入ってない釉という弟がいて、三つ子なんです♪釉も近い内に紹介させていただければと思います♪」
「堂森 葉です♪三つ子の1番下の弟です♪千尋と亜朗とは幼馴染みです♪」
彼らをよく知る人から見ると、不自然なほどにこやかに挨拶をする3人。
特に想。他の生徒会のメンバーですら見たことのないようなにこやかさ。
たまにで良いからその笑顔を見せて欲しい、と思わずにはいられないほどのにこやかさ。
しかし、アーサーとセオドアは3人のにこやかさが本当に心からのモノではないことくらい気付いていた。
ジョシュアとオリヴァーから貰っていた報告に、彼ら幼馴染み達の亜朗への想いは執着と呼べるレベルであることや、亜朗には知られないように危険そうな人物から守っている──────いや、排除しようとする、とあった。
そんな3人が敢えてにこやかな態度をとる理由はたった1つだけ。
亜朗の為。
それ以外には何もない。
つまり、自分達と良い友人関係を築く為ではなく、亜朗にとってどういう位置にくる人物かどうかを見極めたい為なのだろう。
だから警戒する様子は見せず、敢えてにこやかにすることでこちらを探ろうとしているのだろう。
「1年ズレているのは留学をなさっていたからとかですか? 」
「はい♪そうなんです♪」
「三つ子とは珍しい♪是非もう1人のユウくんにもご挨拶したいです♪」
「「はい♪近い内に必ず♪」」
受けて立つ、といわんばかりにアーサーとセオドアも貴族社会でしか見せないレベルの笑顔。
しかし……、
千尋と想と葉の3人がにこやかな理由は、生徒会の仕事を終え寮に向かうまでの道すがら、先輩達に「絶対クソ生意気な態度取るなよ! 」と釘を刺されたからだった。
親臣からも「もしかしたらガルガンド家の事業に引き抜かれる人がいるかも知れないですし、将来的に彼らと関わる皐月出身者がいるかも知れません。もしかしたら既にOBの方で、という可能性もあります。他者の人生に影響するような失礼な態度は、いくら亜朗くん絡みだとしても決して見過ごしませんので……♪」とブラックな笑顔で脅されれば、想の見たことのないにこやかさも納得だろう。
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